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夜の浜辺でひとりのakrutmのレビュー・感想・評価

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)
4.0
映画監督との不倫スキャンダルで失意の底にある女優の揺れ動く心境を、ハンブルクと江陵での旧友たちとの触れ合いを通じて描き出す、ホン・サンス監督のドラマ映画。

この映画の試写会の席でホン・サンス監督と主演のキム・ミニが不倫関係を公に認めたことからも、二人の生の心情が本作に反映されていると解釈でき、そういう意味では監督のしたたかさや実直さを感じる。特に、友人たちとの対比を通じて、キム・ミニが演じる主人公ヨンヒの芯の強さ、自我の強さを強調するとともに、その一方で愛する男性が来ない(来るかどうかわからない)ことへの寂寥感や孤独感、会いたいという素直な心情を、会話の中の何気ない仕草や表情などから表現しているキム・ミニの演技はやはり素晴らしい。会話劇だけでこれだけ豊かな感情を表現できるとは、やはり凄い。

時々出てくるニット帽を被った男性(ハンブルクで時間を尋ねたり、海辺でヨンヒを担いで連れ去ったり、江陵のホテルの部屋の窓拭きをしていたりする)は、何を表現しているのかがよくわからないのだが、愛する人に寄り添っていてほしいというヨンヒの深層心理の現れなのだろうか。

酒とタバコは相変わらずのアイテムなのがちょっと嬉しい。酒飲んで酔っ払ったときの会話の雰囲気をこんなに上手く撮る監督はいないかもしれない。(実際に俳優たちを酔わせているという話もあるが。)喫煙者にとっては、喫煙しながらの会話シーンもあるある感満載。禁煙中の身にはちょっとつらいが。

韓流の知識が冬ソナの頃で止まっている自分にとっては、冬ソナでペ・ヨンジュンの上司役を演じたクォン・ヘヒョが相変わらずいい味を出していたのが印象的。ホン・サンス作品にはよく出演しているみたいなので楽しみ。
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