糸くず

夜の浜辺でひとりの糸くずのレビュー・感想・評価

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)
4.0
ホン・サンスの映画において、愛は夢の中でしか成就しないことがしばしばであるが、夢の中でしか成就しない愛の哀しさ・切なさがこれほどまでに身をキリキリと締め付けてくるのは初めてのことだった。

もちろん不倫への言い訳のようにも見えるのだが、そういうゴシップ的な興味を跳ね返すしなやかさがある。実際の関係はどうなのかはわからないが、ホン・サンスはキム・ミニと出逢ったことで水を得た魚のように生き生きとしているし、キム・ミニもまた素晴らしい演技で愛を求めて彷徨う女の悲哀を体現している。砂浜に横たわる姿もよかったが、橋の前の土下座には度肝を抜かれた。酔って人に絡む時の仕草もよい。

今まで観たホン・サンスの映画の中でベスト3に入ることは間違いない。
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