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世界は今日から君のもののYOKのレビュー・感想・評価

世界は今日から君のもの(2017年製作の映画)
3.8
門脇麦ちゃん、好きなんですわ。『あの子は貴族』観てから、またなんか機会があれば門脇麦ちゃん出てる作品観たいな~と思ってて。思いがけず『浅草キッド』で再会できて、今作をアマプラで見つけたので飛び跳ねながら再生した。

日常系って言うのかな、ほのぼの系って言うのかな、そういう作品好きなんだよね。じんわり胸が暖かくなるような、多く出来事もないんだけど何故か記憶にのこと言うか。作家で言うと綿矢りささんの世界観とか、好き。

映画が始まって直ぐにヒロインちゃんは人付き合いが苦手そうというか、どことなく人との関わりを必要最低限にしているような印象を受ける。そしてそこはかとなく香るヤバい親感。

現実的なお話の中でヒロインがチャンスを掴む(掴みかける)ストーリーなんだけど、そっからあれよあれよと劇的ビフォーアフターする訳でもなく、どちらかと言えば「ええい!もどかしい!まどろっこしい!」って感じのストーリー展開。そういうの我、好き。

ヒロインちゃんもまどろっこしいんだけど、周りの人間がヒロインちゃんをハチャメチャに過小評価して、自分はこいつよりマシ的な目で見て態度で表してるのが本当に胸糞。潜在的にそうしていい相手って思ってるんだろーなー、ってのが手に取るように分かってムカムカした。

ただみんな冷たいようで見守っていてくれているので、結局のところ他人に期待したり他人が何とかしてくれるなんて思わず、自分で一歩踏み出せるかどうかなんだろうな、って思った。

デザイン業界あるあるで「もっとカラフルに!」「もっとこう大胆に!」「○○に似たテイストで且つ斬新に!」なんて注文はよくある。その度振られたデザイナーは「何言ってんだこいつ脳みそ家に忘れてきたんか!?」って心の中で中指を立てるんだけど(私だけかも)、今作でもそういうのがあって笑った。

ヒロインちゃんの描く絵はめちゃくちゃ上手いわけではないんだけど独特の世界観があって、それを認めてすごいって言ってくれる人がいるの、デザイナー冥利に尽きるのではと思った。とても羨ましい。

周りからの扱いもぞんざいなところから、恐らく自己肯定感も低い(もしくは無い)ヒロインちゃんに見えたので、徐々に人と繋がって関わって、しかも優しい人が多いってとても恵まれているなって感じた。

ちょっとネタバレになっちゃうけど、サバゲースタイルで人様の会社に乗り込むって発想マジでイカレてて好き。現実でやったら夕方のニュースで全国放送されちゃうけど、こうやってエンターテインメントのひとつで見るなら好き。大変に最高にシュール。

終盤のヒロインちゃんとお母さんのシーン「ダメダメダメダメ嫌だっていいな!大声で無理っていいな!頑張って!お願い!」ってめっちゃ応援上映してしまった。これはあかん母親だ、私の母親にもほんのりその気があるから分かるんだ!

劇的な成長がある訳でもなく、劇的な成功がある訳でもなく、劇的な変化がある訳でもない。でもなんかグッときた。最後は上手いことまとまるし、結果的にみんないい人だった。優しい世界。
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