あなぐらむ

ラスト・キャバレーのあなぐらむのレビュー・感想・評価

ラスト・キャバレー(1988年製作の映画)
4.5
シネロマン池袋さんで。
思えば、平成とは映画ジャンルとしてのロマンポルノが消えた時代だった。88年、ロマンポルノ終了間際に作られたロマンポルノへのラブレターであり、さよならの手紙である。映画の工場だったにっかつ撮影所の、いや観客が自ら紡いでしまう恋文である。
じんのひろあきの脚本はその後の「櫻の園」を彷彿とさせる作劇と台詞回しが心地よく、随分とクリアな画質で高間賢治撮影監督の浮揚感ある映像が酔わせる。アイドル映画と小津映画とキャバレー映画が成人映画としてミックスされる、日本ならではの映画の魔法。

宇宙少女(調べてください)かとうみゆきが、金子の手にかかり輝くばかりの日活青春映画のヒロインとして聖の部分を受け持ち、性の面はピンク映画からエース・橋本杏子がピンサロ嬢役で受け持つ適材適所。清水舞のファニーな佇まい、高樹陽子の巧者ぶりも印象に残る。

空舞台から始まり空舞台で終わる構成は、ロマンポルノ開始から終了までの撮影所を思わせ、このタイミングで視ると賑やかな所だけ見ていたいと途中退場する大地康雄に、黒澤満さんがかぶって何度も泣きそうになった。

金子修介の父子相姦的なテーマは、ロマンポルノの枠の中でよりストレートに劇中で父娘の会話として現出し、そこから父の退場を経て娘の自立をフラッシュダンスのような水の映像として描き出す。
じんのさんは警報鳴らすの好きだね。