イチロヲ

ラスト・キャバレーのイチロヲのレビュー・感想・評価

ラスト・キャバレー(1988年製作の映画)
3.5
キャバレー経営者(大地康雄)を父にもつ女子高生(かとうみゆき)が、店の灯火が消える瞬間を通して、男女の悲喜交交を目の当たりにしていく。キャバレーの廃業と若年の旅立ちを描いている、日活ロマンポルノ。NCP共同製作。日活は本作の封切り直前にロマンポルノ終了を告知している。

新人ホステス(橋本杏子)を中心にしたドラマと、女子高生と大学生(渡辺航)の甘酸っぱい青春が同時進行する作風。キャバレー内部を堅実に描いた人間ドラマとは異なり、全体的にファンタジー色が強い。

世間ズレしたホステスと視野の狭い若年層の、双方向の新たなる旅立ちを描いている点は好印象。しかし、閉店当日に至るまでの群像劇がイマイチ散漫な印象を受けるため、半ばムリヤリな感傷ムードに付き合わされているような感覚に見舞われる。

大地康雄演じる経営者は「スケベ心を全開させて大騒ぎしている男女を人間観察するのが大好き」という人物。そのスケベな灯火が消えてしまうことの虚しさと無念さというのは、きちんと伝わってくる。明るいスケベに徹底しているところも素晴らしい。
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