April01

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2のApril01のレビュー・感想・評価

3.5
すべては、より大きな善のために by ダンブルドア(原作)

パート1に引き続き、原作が素晴らしすぎるために、ごめんなさい、どうしても物足りなさを感じてしまうのを禁じ得ず。

原作もなんだけど一貫してメインの3人に感情移入しきれない。そんなに好きじゃないしこだわりも生じない。特にハリー、主人公なのに不思議だなあ。よく頑張りました~!くらいにしか思えなくて、ハリー絡みで涙は全然出ないのに、サイドストーリー的なサブのエピソードで結構泣いてた、原作も映画も。

好きな脇役たちの個性が光り、その輪の中で運命に流されるようにハリーが活躍している感じ。
そもそも、この3人なんなの?というね、選ばれし者なんだけど、ダンブルドアから謎の相続までしてもらっちゃって、うち2人がなんで自分が?って驚いてるのは正直こっちも一緒で、特にロン。

特別な人とそうでない人の間の壁を描くと同時に、むしろ平凡な人も、特別な人にとって特別なら特別になれる、みたいな、階級差を取っ払いたい意識が物語全体に流れていて、それは屋敷しもべ妖精とか忌み嫌われる狼人間、交わらないユニコーンなど色んな生物、その極めつけとして純血、半純血みたいな属性としても徹底的に語られている。

そういう違いを克服して平和を求めるけれど、違いはあるんだよ、という、近年顕著になって時には間違った批判をされてしまっているローリングさんの思想が本作にしっかり描かれていることにも改めて気づきがある。

前作でも文句を垂れてしまったけれど、やはり原作を改変しているところは気になってしまう。

ハリーが、ヴォルデモートとの最後の戦いの前にアガサ・クリスティーのポアロよろしく、杖の種明かしとスネイプの件を滔々と語るのが、推理小説のようで胸のすく感じがしてミステリーのクライマックスさながらなんだけど、本作では、戦い終わってから2人にこっそり教える感じなので、うーん。そもそもこれではVですら理解してないのではって感じで残念。

一番重要な点、スネイプの裏切りと愛について長々と話し、対するVはそんなこと関係ないと言い放つ。この会話が需要でありハイライトなのに、あっさり改変。全てが明らかになるあの瞬間、敵と相対して敵味方のオーディエンスを前にした一騎打ち!の醍醐味がなくなってしまってる。

しかもエクスベリとアバダで、エクスベリがアバダを跳ね返すはずが、両者、呪文言わずに無言呪文にしちゃってる。
しかも跳ね返して一瞬のはずが、ジリジリぶつかり合ったら、ニワトコの杖のオーナー云々の意味がないよね!って突っ込みいれたくなる😅

ロンとハーマイオニー、ハリーとジニー2組のカップルのキス、そこでじゃないんだよね~って感じで全然恋愛ケミストリーを感じない。
特に前者は、原作では屋敷しもべ妖精に対してロンから優しい言葉が出た時、思わずハーマイオニーが抱き着いて・・・という素晴らしい流れのキスなだけに、これも残念。
後者は、戦場の恋人みたいなドラマチックな演出すぎて見てられない。
そもそも、屋敷しもべ妖精を救う活動について、映画がノータッチだから、戦場でせざるを得なかったというのは理解できるけど。

1つだけどうしてもメモしておきたいのは、スネイプがニワトコの杖について知っていたかどうかについて、原作はハッキリさせてないのに、映画は知っていたという解釈でわかりやすくしてしまっているのが残念。

スネイプとVの最期の会話の場面、原作では杖について語るVに対してハリーを連れてこさせてください、と繰り返すだけで、杖が最強とか、あなた様が主とか言ってない。
だからこそ、いったいスネイプは知ってたのか知らなかったのかという考察の余地を残しているというのに。
知ってることにした方がわかりやすいしドラマチックという安易な改変。
実際ダンブルドアはスネイプに全てを話していたわけではなかったわけで。

映画では、
スネイプは杖の秘密を知っていたことになっている(A)
けれどペンシーブで見た記憶でDはSに自分を殺す指示を出し、
その理由として、それによりVがより信用するだろうから(B)と言う。杖の所有権絡みとは言ってない。
AとBは矛盾するので!
SがVに長弁たれることにより、知っていたことになってしまい、ところが直後にハリーに見せるSの記憶では、杖に関するDからの指示はないという大矛盾が生じてしまっている。あのとっさの瞬間に、ハリーに見せるべき記憶と自分の知り得る知識を別にしてたというなら、ますます複雑ですね!😲
Dは自分の死の裏にある杖の所有権の秘密をSに言わなかった、だからSの記憶には存在しない、けれどS自身の考えとして杖の事は知っていた、ということですかね!😲

原作は、杖についてダラダラ述べるVに対してSは何も言えないでいる。
それをドラコを守るために黙ってたと解釈するのは。うーん、そこまでSは聖人君子の万能人間じゃない。
彼を突き動かしてきたのは、ひとえにリリーへの愛。ただそれだけ。リリーしか愛してないよ、彼は。その愛の貫き方がカッコいいのであって善人ではないのに。

リリーさえ助けてくれればハリーが目的なら殺せ、ジェームズも死んでもいいって人なんだから。その点において彼は一貫している。
騎士団の仲間でありながらシリウスを許そうとも理解しようともしなかった。その点シリウスもブレないところは同じだったとも言える。

原作ではSがルーピンを助けようとしたのが逸れてジョージの耳を削いでしまったこともペンシーブで見た記憶に含まれているし、別の場面でルーピンは人狼であることをバラされはしたものの、在職中はちゃんと彼の為に薬を作ってくれたからこそホグワーツで教え続けられたと言ってる描写もある。
好き嫌いがはっきりしててルーピンはいじめを見ないふりというか黙認で賛成してはいなかったことがわかってるし外れものに対する同類意識がどこかにあったよね、イケメン人気者のシリウス&ジェームズと違って。

スネイプとシリウスって、2人とも愛した人の為にハリーを守るという、一生を振り返ってみれば、形は違えど同じことに命を捧げたんだな、と思うし、結果として、どちらかと言えばスネイプの方が立派な仕事を成し遂げたのも、人は見かけによらないし、誰かを愛する気持ちがあれば、結果として、こんなにも大いなる善に貢献することができるという、なにか勇気をもらえる物語という気にもなる。
翻ってシリウスの一生って切ないな、と後からジワジワきたりもする😭

というように、ハリーの物語の体を取りながら、その他の登場人物たちに思いを馳せる壮大なマジックの仕掛けがある素晴らしい原作。
結局原作についてメモして終わり😅


原作引用:
「そのかわりに、わしには何をくれるのじゃ、セブルス?」
「何なりと」
“And what will you give me in return, Severus?”
“In — in return?” Snape gaped at Dumbledore, and Harry expected him to protest, but after a long moment he said, “Anything.”


「これほどの年月が、たってもか?」
「永遠に」
“After all this time?”
“Always,” said Snape.
April01

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