春とヒコーキ土岡哲朗

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2の春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

正しく強く成長したキャラクターたちに感動しっぱなし。

思う存分、最終決戦を楽しめた。前作の退屈さと打って変わって、今回はずっと重要なシーンで面白かった。今まで見てきたキャラクターが、勇ましく戦うのをたくさん見られるから気分も乗る。今まで闇を恐れてもきたけれど、みんな覚悟を決めて気持ちを一つに戦うのが熱かった。ただし、序盤から『エンドゲーム』の最後の1時間をやっているような変な構成ではあるので、やはり3時間の1本の映画にまとめた方がよかったと思う。
ただ、ニワトコの杖の所有権が実はこうだったという説明は少しもやっとした。

このキャラクターたちと過ごす最後の映画。命からがらホグワーツに忍び込んで帰ってきたハリーを、マクゴナガル先生が多くは語らず優しく迎え入れてくれたときの安心感。マクゴナガル先生が一番好きなキャラかも。厳しいようで、『賢者の石』でほうきをくれたり、『炎のゴブレット』でダンスを教えて勉強だけじゃない素養も大切にしているところに好感が持てた。最後の今回は、ハリーが大きくなったのを認めた接し方で嬉しくなった。学校で戦いが始まってから、名前のあるキャラクターたちはそれぞれに駆け回っていて忙しさにテンションが上がった。マクゴナガル先生がシェーマスに橋の爆破を任せ「なんでも爆発させるのは得意でしょう」と言ってシェーマスも「任せろ」と引き受けるのも、今まで毎回魔法を失敗して爆発するギャグが最後にかっこいい武器になってて憎い。
ハリーが死んだと思いみんなが落胆する中、ネビルが勇気を持って前に出たのがかっこよくて、思えば彼は1年生のときも勇気を持ってハリーたちの前に立ちはだかった。ネビルの作った隙を生かしてハリーが生きていることを明かし、そこからの形勢逆転が気持ちいい。ナギニを殺したのがネビルだと判明した瞬間、よくやった、と思ったが、そこはドラコの方がよかった気もする。ドラコは、前作のラストでハリーを売らずに彼の命を守っていた。それは、ドラコはどんなにハリーを目の敵にしていても同級生を殺すような人間じゃなかったから。悪陣営として動くドラコだが彼が焼け死にそうになるとハリーも彼を救う。でも、そのあと怖気づいてヴォルデモートの方に行き、ハリーの復活後は家族で戦いから逃げる。いや、そこは絶対ナギニを殺す役をドラコがやるべきだった。スリザリンの彼がグリフィンドールの剣を使うのも洒落てるし。ただ、19年後の駅にドラコの姿があったのは良かった。ハリー・ジニー夫妻とロン・ハーマイオニー夫妻以外で唯一ドラコだけをここに登場させているのは、作り手もきっちり彼のハッピーエンドをこちらに伝えてくれるためだろう。

スネイプの真実。ハリーの母に惚れていたスネイプは、ダンブルドアのスパイとして活動し、ずっとハリーを守ってきた。厳しく振る舞いながらずっと、ハリーを守ることに人生を捧げてきた。ハリーも分霊箱であり死ななければいけないと分かったとき、スネイプは「彼は殺される家畜として今まで育てられたのか」とダンブルドアに憤慨する。ここが、いちばんスネイプの優しさが分かる場面。ダンブルドアの非情さも目立って引いちゃうけど。ドラコに代わってダンブルドアを殺すことも本人から託されていて、そんな孤立する役目を押し付けられても全うした。一番冷たそうな人が、段違いで一番愛情深かった。そしてスネイプがハリーに自分の記憶を見せたのは、本当は味方だったのを知ってほしいからではなく、ハリーが分霊箱であることを知らせるため。最後に19年後のハリーが息子にダンブルドアとスネイプからとった名前をつけているが、それを「二人の校長から取った名前」と言うのがよかった。ダンブルドアと並べて恩人であり偉大であることを、さらりとした言い方で言っている。ハリーはスネイプの愛情に守られ、スネイプは目的を達成した。