佐藤克巳

蜂の巣の子供たちの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
5.0
京橋フィルムセンターで牛原虚彦氏が語った清水宏評は辛辣だった。牛原自身、成瀬巳喜男、豊田四郎、五所平之助、島津保次郎等が松竹を去った原因が清水だと言われた。そんな人物的に問題があろうとも、ロードムービーと子供のファンタジー映画を撮らせたら世界一だと思う一作。私の父も、徴用された藤沢から東海道を西下して故郷迄歩いた話を聞いていたので、この映画は全くの架空ではない。下関に降り立ったみかえりの塔出身の復員兵に、闇市を取り仕切る片足の男の手下で食い繋ぐ孤児が働いて食す事を教わり健気にも付き従った。運搬車の荷の上げ、塩田の加勢と仕事を変転としながらも、子供達の教育の必要性を感じみかえりの塔を目指す。錦帯橋を越え原爆惨禍の広島で引揚者の二人と再会し惨憺たる光景の中、女は上京し義坊は合流し、四国の山中に入り材木の切り倒しに励む。義坊は大病となり寝込んでいたが、ある日、海を見たいと切望し仲間に負ぶわれ山頂にたどり着いたが息絶えた。やがて、神戸で身売り寸前の女を助け、大阪ひめゆりの塔の恩師と生徒等の温かい出迎えを受けた。
佐藤克巳

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