櫻

蜂の巣の子供たちの櫻のレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
-
「この子たちに心当たりはありませんか?」
でかでかと画面を埋めるこの文に、はっとさせられる。戦後、戦災孤児を引き取って暮らしていた清水宏監督が、子供たちと『蜂の巣映画部』を設立し、彼らひとりひとりが自分自身として出た自主制作映画として世に出た。

大人も子どもも彷徨えるみなしごだった。彼らがほんとうに求めていたものとはなんだったのか、観ているうちにだんだんと分かってくる。みんなでいるけれど、彼らはひとりの個としてそこにいた。哀しみに喘ぐことなく、眩いほどに逞しい。そこに綺麗事が付与されていないのは、ひとえに監督自身と演者の子どもたちとの間に、監督と子どもの関係性だけではない時間が流れていたからだろう。生活を続けるにはお金があればいいのだけれど、それだけでは彼らは救われない。一緒に遊んで同じ時間を過ごし、愛情を肌で感じてもらうこと。これを監督は自然とやっていた。

海に眠る母。山に眠る子。生のすぐ隣にある死の存在。手元から零れ落ちていく数少ない大切なもののことを、彼らは忘れないでいることだろう。たくさんの光の粒みたいな子どもたちと彼らの再会に、私たちはきっと希望を見る。夢と希望を混同することなかれ。これは希望、消えてしまわない。
櫻