フジタジュンコ

ピンクのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

ピンク(2016年製作の映画)
4.4
これを見たくてJAIHOに加入したのだけど、テーマがテーマだけにずっと見る覚悟が決まらず、配信停止前日に滑り込みで鑑賞。

性加害、ひいてはインドの女性に対する暴力的な価値観をつまびらかにするものなので、非常に重苦しくてしんどい作品ではあるが、インドにそれほど詳しくない私でもどんな問題が起こっているのか、制度や差別が根絶されずに今もどんなふうに苦しむ人たちがいるのかが理解できるし、さらに、加害者の男性をただ暴力的な人物として描かなかったことも好感が持てる。見ながら何度も「私がこの法廷に出向いてマシンガンをぶっぱなせば…」と思ったが、そこにいた彼らをそうしたところで、何も解決しないのだ。これは社会に、文化に、生活に深く深く根付いており、キングス・カレッジ・ロンドン(これに笑った人はネットミームに敏感だね…)に留学できるような良家の子息ですらそうした先入観、偏見から抜け出せない。絶望的だ(さらに困ったことに、男性の側は何も困っていない)。

被害者の女性3人の弁護を通して、女性にとって絶望的である社会をアミターブ・バッチャンが理解させてくれる。アミターブ・バッチャン演ずる老弁護士の語りには思わず涙させられる。「"NO"は"NO"以外の意味を持たない」。泣ける。彼のようなスーパースターがこういう作品でメインを張ることもまた意義深いのではないか。

アミターブ・バッチャン以外の俳優は全員新人か中堅くらいとのことなのだけど、ものすごい緊迫感のある演技でこれまた素晴らしかった。エンドロールで事件の真相が明かされるのも、よい演出だった。