ベルサイユ製麺

ジョシーとさよならの週末のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ジョシーとさよならの週末(2016年製作の映画)
4.0
パッケージだけサッと見て、十中八九好みに合わない作品なんだろうな…なんて思ってたんですけどね。

ジョシーは彼女と幸せそうに話しています。見るからに優しそうな(気弱そう?)なジョシー。ナチュラルな美しさの彼女。今日は彼の誕生日で、ディナーはチキンでいい?なんて。それで、ジョシーはジムに出かけ、彼女はキッチンで下拵え。
ランニングマシンで汗を流すジョシー。
テキパキと調理する彼女。
帰宅するジョシー。ドアが開かない。ドアの隙間からはベルトの端が飛び出ている…。慌てふためきドアをこじ開けたジョシーが目にしたものは…。
冒頭、ここまでがほんの数分の出来事。一瞬で心が悲鳴をあげます。その瞬間はきっと概ねこんな風に、前触れも無く訪れるのでしょう。

ジェシーから友達のところに電話が入ります。予約してたレンタルハウス、バチュラーパーティ…じゃ無くなったけど、集まろうと思うんだ。って。うーん、どうしたものか。
で、田舎の一軒家にポツリポツリと男が集まります。出迎えるジョシーは、いつも通りに見えるけど、これは大丈夫なヤツなの⁉︎
よっぽど無神経なのか、度を超えたお人好しなのか、集まった4人+ゲスト達で、奇妙としか言いようのない週末だけのパーティが始まります。
以降、映画はほぼパーティシーンだけが続きます。ジェシーは微笑みながら、でも心の底を見せません。仲間達は務めてなのか天然なのか、「ハッパ・ハッパ!」「そのエアガンで、俺の股間を撃て」「それよりボードゲームを」とパーティを盛り上げます。一見すると『ハングオーバー』なんだけど、全く笑っていい気がしない。パーティの要たるジェシーは如何なる精神バランスなのか?仲間達(優しいボンクラ達)は有事に対応出来るのか?…みんな、ホントに、本当に大丈夫かい?
鑑賞中、心が痛くて辛くて、無意識にずっと腕をクロスして胸を守る様にしてました。魂が、ドッと濁る予兆に怯えながら。
仲間はみんな、彼らなりめいめいの痛みを抱きながらもパーティに集まってて、それでもジェシーの悲しみを癒したいのだけど逆に感化されてしまったりで。皆んながギリギリの状態に目を伏せながら続けるパーティ…。このパーティは、本当は誰が主役な事もあり得る。だから、きっと自分ならこうして欲しいと思いながら、いつも通りに戯ける。なんてバカバカしくも美しい。
終盤の最悪の展開からの、ジェシーの感情のメルトダウン。真っ当な悲しみと僅かな怒りの発露、からの静かな展開に、完全に心は満たされました。誰の気持ちも理解は出来る。
自分はもう完全に合点がいってしまって、なので正直もうどこで終わっても良いと思いました。実際、ブツっと終わってしまうのだけど、コレで良かったです。続きは皆様の日常で。

他の方のレビューを見るとあんまり好意的な評価は少ないみたいで…、どうやら好まない十中八九の、残りの一か二の方が自分だったみたいです。
全く個人的な考えですが、いつジェシーや、その彼女の様になってもおかしくないと思っている方には深く届く作品だと思います。きっと、その瞬間は突然なんだ。