HAYATO

心と体とのHAYATOのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
3.8
2023年487本目
第67回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で、最高賞の金熊賞を獲得したハンガリー映画
「自分が鹿になっている」夢の中で出会うという不思議すぎる現象がきっかけとなって展開されていくラブストーリー
コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいる女性・マーリアと、片手が不自由な中年男性・エンドレが、偶然にも同じ夢を見ていることがわかり、2人は急接近していく。
ハンガリー映画は初めてかも。
牛の屠殺や自殺に関わる描写があり、それらは中々ショッキングなので、苦手な方は注意すべし。
静かに死を待つ屠畜場の「牛」と幻想的な森を彷徨い歩く「鹿」の対比が印象的で、それぞれの動物は、マーリアとエンドレの「現実」と「理想」を表している気がする。
2人が「夢を見なくなった」のは、現実世界で心が満たされたためであると解釈でき、相手の気持ちを察することも、人に触れることも困難だったマーリアが、エンドレの腕をそっと手繰り寄せる終盤のシーンは、2人の間に確かな絆が芽生えたことがわかる。
心にハンディを抱えたマーリアと体にハンディを抱えたエンドレが、それぞれ勇気を振り絞って一歩を踏み出す姿に、静かな感動を覚えた。
エンドレ役のゲーザ・モルチャーニは、俳優ではなく演劇の翻訳や編集を生業にしているらしく、本作が演技初挑戦だったみたいだけど、孤独に生きる男を巧みに表現していて、とても初挑戦とは思えなかった。
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