うえびん

アジズの奇跡のうえびんのレビュー・感想・評価

アジズの奇跡(2015年製作の映画)
3.5
他力と自力

1960年、トルコ、イスタンブールから遠く離れた山奥の村が舞台。

雄大な自然。澄み切った空。切り立つ岸壁と遠くに連なる山々。一年の間に8ヵ月も雪に覆われるというが、雪景色は荘厳で美しい。また、人と共に暮らす馬やガチョウも印象的。

村長の6人息子の末っ子アジズ。身体が不自由で人の言葉は話せないが、馬と心を通わすことができる。村人から偏見をもたれ、子供たちからいじめられていた彼の日常が、イスタンブールから赴任してきた教師との出会いで大きく変わり始める。

教師の建てた学校で、子供たちと一緒に学習を始め、人の言葉を獲得する。自分の思いや考えを表現できるようになる。父の善行から母たち女性陣の嫁選びで妻を持つ。妻への思い、芽生えた愛情から、彼のとった行動とその先は…。

タイトルにもある軌跡、最後の場面には感動した。アジズの受難、学習、結婚、そして奇跡へとたどり着く彼の人生の変遷。場面展開やエピソードごとの時間配分が少し雑な感じはあったけど、生活の環境や周囲の人たち(他力)と、彼の努力(自力)が交わりながら変化してゆく物語は面白かった。

自然の恩恵や他者からの善意に感謝し、自分のできることを精一杯行う。そういった行為の積み重ねの先に常識を超えた軌跡が起こることがあるんだろうな。
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