MikiMickle

MOTHER FUCKERのMikiMickleのレビュー・感想・評価

MOTHER FUCKER(2017年製作の映画)
4.0
レスザン TVという音楽レーベル。正直な所、知っている人は多くないであろうアンダーグラウンドのレーベル。結成25周年。パンク・ハードコアが軸にありつつも、多種多様なバンドを受け入れ、発信し続けている。
ギターウルフ、DMBQ、bloodthirsty butchers、ロマンポルシェなどを排出しつつ、商業主義とは無縁の、常に“底辺”を生き続ける“最低で最高”のレーベル。

この映画は、レーベルの主催者でありもちろんミュージシャンである谷ぐち順氏と、奥様であり同じくミュージシャンであるYUKARIさん、そして二人の息子である8歳の共鳴(ともなり)君の一家を通して、人間の・家族の生き方と、様々な“愛”を感じさせられるドキュメンタリーである。

まず、レスザン。正直、レスザンは、傾倒していたバンドもいくつかあったけれど、よくわからない謎のレーベルだった。その全容を垣間見れた喜びもある‼
そして、所属するバンドたちの、個性の強さったら‼今だかつて、こんな“変でかっこいい”バンドたちがこれほど集まるようなレーベルはあっただろうか。いや、ない‼
アンダーグラウンドで音楽をやり続ける人々の煌めきと純粋さと美しさと感動は、メジャーの世界とは全く違う事を、私は今までそういったバンドから教えてもらってきた。
レスザンはそういうバンドの“共存”の場であるのだ。唯一無二のレーベル。

そして、彼らがその共存の場に集まるのは、谷口氏とYUKARIさんのパワーと、“楽しもう”という素直すぎる感情と、偏見のない価値観と、音楽への熱想いがあるからなのだと思う。
“楽しい事だけぶちかませ‼‼”の精神。

大石規湖監督もこのレーベルと一家に魅了された一人。
カメラは、常にこの家族のリアルな生活を映し出す。正直、「よくこんな所を撮れたね‼」と驚く(笑)
一家の住む広いとは言えないアパートで繰り広げられる日常と喧騒。
監督はもはやこの一家の1人とも言えるような距離感で、真横で影を消して話し合いや喧嘩などを映す。 監督曰く、「二人の世界になってるから、じっと…」と(笑)

故に、なぜだか私もその一員になったような臨場感を感じる。
この家族の傍にいるような…

そう、監督は、この一家の魅力を十分に見せてくれるのだ。
音楽と、日常と、生活と、ライブ活動と…全てが人生であり生き様の一家。結婚すると、子供を持つと、今までしてきた事を捨てて諦める人は多い。しかし、この一家は違う。自分が何をすべきか、何をしたいかという事と、子供にとっての影響や、子供の心情や、それら全てを考え、深夜まで話し合い、“間違っているのかもしれない、でも、この道を進む”と。心底かっこいいと思う。

この映画とこの家族はパンクだ。パンク精神を、様々な面で切り取り、魅せてくれるものだし、例えレスザンを知らない人でも、いやむしろ知らない人の方にこそ見てほしい映画だ。笑顔と笑いと元気と生きる活力を得て、後ろから背中を押してくれるような、映画。
MikiMickle

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