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ヒットラー 第2部:独裁者の台頭のtorakoaのレビュー・感想・評価

2.8
前に観たような気がするけど何も思い出せず再度鑑賞。どの場面もあー観たなーと思いながらだった。多分また思い出せなくなると思う。事実をテキトーにちょこちょこつまみながらテキトーになぞりつつ悪役らしく付け加えて何となくまとめたみたいな感じでぼやーっとしてるんだもの。

最初から一貫してどうかしてる人として描いてて、演説は反ユダヤを叫ぶとこばっかりみたいな印象。そこまで執拗に出すなら理由を見せるべきだと思うのだが、ユダヤ人を敵視し出したのは通りすがりの人の愚痴か何かがきっかけみたいになってるし何というか凄い小物感。何故この人が人心を掌握し支持されのし上がっていったのか全くわからないつくり。
この描かれ方だと武力・暴力による脅しと金で我儘通そうとする浅薄な狂人を支持した奴らが馬鹿、当時のドイツ人過半数が馬鹿、て感じになる。
手塚治虫作品とか古い漫画みたいな人物で、実在した人間っぽさが希薄に感じた。まあわかりやすいっちゃわかりやすいんだけど。

主演俳優はやや小柄(173cmらしい)、周囲には高身長の俳優を配してより小柄に見えるようにしている気がする。ピーター・ストーメア189cm、リーヴ・シュレイバー191cm(彼が演じた人は2mあったらしいが)、もっとデカい人もいた。演説とか凄く研究して臨んでるのは伝わってきたし狂気の表現もよくできてたと思う。それゆえに浅くて薄い人物像と脚本の印象をより強めてしまってた気もする。ヒトラーに取って代わられるドレクスラーかな、の人のがスピーチ力があるように感じた。わざとらしくないし。

ヒトラー以外で家族との場面があったりするのはジャーナリストと実業家ハンフシュテングル(演:リーヴ)だけなのだが、実業家夫妻の心の変化が対照的になってるのはいいとして、何でそうなっていったのかわからなくて特に嫁の違和感がすごい。全体的に作り物臭さがありすぎに思う。
ジャーナリスト:フリッツ・ゲルリッヒは違和感少なかったし、少ない場面で効果的に描いてたと思う。

前後編で3時間、この尺でこれかーという感は否めない。2003年の作品だし、ザ悪役(て書くとダイソーの商品みたいだな)にしないと苦情が殺到しそうだし無難なとこなんだろうけど、今更前時代的に単純明快な悪役らしい人物として描いて娯楽として消費するだけみたいになってしまってるのが何だかなー。何故ああいうことになってしまったのか?ヒトラーが狂人だったから。ってそれでいいのかなー。

多分無意識にでも誰しもが持っている蔑視や優越感、差別的な感情を増幅させればそこまではいかずとも似たようなことは起こり得ると私は思う。ヘイト感情がヒートアップしていき愛国心というのも絡んでる、というのは何年も前からネット上でよく見かける不愉快な現実だからだ。戦争という非日常が始まり、日常になっていった時、外れない箍などないのではないか。


姪のゲリの人どっかで見たなと思ったら『プライドと偏見』の妹だった。エヴァ・ブラウンの人は『ペインテッド・ヴェール』に出てた模様。
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