YasujiOshiba

サンフェリーチェ/運命の愛のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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イタリア版のDVDで鑑賞。RaiTrade のパッケージなんだけど、聴覚障害者用のイタリア語字幕がついてないのはひどい。

以下、備忘のために。

原作は大デュマの『ラ・サン・フェリーチェ(La San Felice)』(1865年)。デュマはガリバルディの千人隊の派遣の話を聞きつけて、シチリア遠征に合流して、武器や赤シャツや軍資金を提供したらしい。そのガリバルディから「遺跡と美術館の長官」に任命されたデュマ、1861-1864年の3年にわたってナポリに滞在する。こうして彼は、ナポリの街とその人々を深く知ることになり、その知見から書き上げた作品のひとつが、1799年にナポリを3ヶ月だけ解放したパルテノペア共和国を舞台にしたルイーザ・サンフェリーチェの物語だ。

パルテノペア共和国に出現したのは、まさに19世紀的な理想を先取りしながらも、束の間の夢に終わったユートピアであり、ナポリの人々がジャコバン派と王党派に分かれて殺しあう内戦状態なのだけれど、タヴィアーニ兄弟はそこで、ルイーザ・サンフェリーチェの大恋愛を描き出そうとしたわけだ。

日本ではザ・シネマで放送されたみたいだけれど、DVDとか配信とかはないみたい。最後まで退屈することなく楽しめたのだけど、タヴィアーニ兄弟自身は、このテレビ映画をそれほど評価していないみたい。ここに描かれるのは、彼らのルーツともいえる19世紀(Ottocento)なのだけど、だからこそ満足がゆかなかったのかもしれないな。

ぼくとしては、懐かしいナポリ訛りのセリフを堪能できた。それに、パルテノペア共和国のイメージがつかめたのもよかった。猛烈に歴史の勉強がしたくなる映画でもある。

それにしても、サンフェリーチェの血を、ラテンアメリカの解放者たるシモン・ボリバルにつなげてみせるのは、少々わざとらしいけれど、いかにもタヴィアーニ兄弟らしい着想だ。ベタだけれど、うるっとしてしまった。
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