ポンコツ娘萌え萌え同盟

映画ドラえもん 新のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

3.7
枝分かれした、2つの作品について。
昨日、瀬名秀明の小説版「鉄人兵団」(以下:小鉄)読んだので再鑑賞。
旧鉄人兵団(旧鉄)を再鑑賞する気で読書したが、小鉄を比較するなら新鉄人兵団(新鉄)の方だと感じた。
以下、旧鉄人兵団は旧映画版と漫画版を一つとして本作の感想を書きたい。一部描写の違いはあるが、ほぼ同じなので。
旧鉄自体元々脚本の完成度の高い作品だった。
他ドラ映画より異色で、冒険活劇的はないが、左右あべこべ以外現実を模した世界での"戦争"。鉄人兵団によって破壊される都市等は、他のドラ映画にはない恐ろしさが鉄人兵団の中にある。そのなかでの人とリルルの葛藤、何よりもリルルの存在の魅力は絶大だった(ついで少年だった私の性癖も破壊つくした)。世代ではないが最初に見た鉄人兵団が映画版旧鉄で特に思い入れは深い。

ここら本題。
旧鉄を根源とした小鉄と新鉄だが、この2作を比較すると全く枝分かれした対照的な作品になる。
新鉄は友情、心を通わす、他者を思いやる心などの要素が比較的に強い。旧鉄のミクロスの存在意義は新鉄では失ったが、新鉄は新たに"ピッポ"を交えて、鉄人兵団の基本筋に加えて一新したリメイクとなっている。
旧鉄に比べると変更点はそれなりにあるが、それでも物語の面白さやラストの感動は未だ色褪せず、現代感覚で作画も良く最も触れやすい作りとなっているのは見事。何より相変わらずザンダクロスかっこいいし。
小鉄は新鉄に合わせて出版された作品だが、大まか的な内容は旧鉄。ミクロスの扱いも。それに加えて各キャラの心理表現と葛藤を深堀りし、科学検証、描写の変更や追加を行い、描写の説得力の高さや奥行きを与えつつ旧鉄以上にシリアスでハードなのが特徴的だった。特に終盤の鉄人兵団との戦いの絶望感は鉄人兵団の中で一番。
全体を見渡せば小鉄は鉄人兵団そのままのノベライズを行うより対象年齢を上げ、純リメイクの方が正しい。

既に2作が全く違う切り口になっているのは確定的に明らかだが、最も対照的なのはジュドの元の存在の扱いである。
旧鉄ではドラえもんらの手によって改造された後、その性質を失ったが、現代で本作を書く際に決して避けられない問題である。
新鉄はジュドをピッポへと姿形を変貌させた。その上で本来なら敵対者ののび太達と交流していく中での心理的な転向や、リルルとジュドの関係性を描いている。
一方で小鉄では元のジュドの存在者は一貫して敵対者として描かれている。ドラえもん達の声質を真似て話したりと、不気味な存在としてのエッセンスも含まれてる。何より旧鉄と同じく改造された後に、元のジュドの性質が完全消滅することなく、電子頭脳が抵抗している場面も存在する。とても心を交わることが可能な存在としては描かれていない。
意図しているかは不明だが、ジュドの存在は全く対照的になるのだ。勿論その理由は前述にも色々記載した様にリメイクする際にあたっての方向性の際にあるだろう。
存在者の扱いでどちらが正しいかは甲乙をつける気はないが、どちらも違った感覚で触れられるのは間違いない。
何より鉄人兵団そのものが粗は多少ありつつも全体的に優れた作品なので、依然として完成度は高い作品ではある。