nccco

ジュリアの世界のncccoのレビュー・感想・評価

ジュリアの世界(2016年製作の映画)
3.6
@イタリア映画祭
これ、実は去年の釜山で一回観て、2度目です。
すごく良かったので、再鑑賞。日本語字幕で観れて良かった。

エホバの証人の厳格な家庭に育ちがんじがらめの生活を送るジュリアが、ある日一人の青年と出会い恋に落ち駆け落ちをするも、外界に投げ出され現実に向き合う中自分のあるべき姿を探していくというお話。
原題の" la ragazza del mondo"は、「世俗の少女」という意味。実際映画の中でも、エホバの証人である「私たち」と、それ以外の人々=「世俗の人」という差別的な言い回しが特徴的に繰り返され、改めて良識を狭めるような宗教の強さと怖さについて考えさせられる。

ジュリアは小さい頃からエホバの証人であることに疑問を抱かず誇りを持って生きてきたけれど、正直どこかでこんな生活つまらないと思っている。そんな時にリベロに出会い、彼のワイルドで破壊的な魅力に惹きつけられる。リベロは愛する男の子だけど、どこか自由を得るためのトリガーとして利用したような節もある。彼への想いと、自分が人生かけて信じてきたものから切り捨てられたショックと、もう戻れない家族への愛情、自分がほんとうに求めているものの間で揺れ動きながら、リベロに抱かれて感じる一時の安堵。その時の張り詰めるようなジュリアの感情が画面から滲んでくるベッドシーンは見ていてとても切なかった。

複雑な感情を表情やたたずまいで演じてみせたジュリアも、こんな彼なら道を踏み外しても愛さずにいられないと思わせるリベロも、演技と思わせないようなリアルさでストーリーを引っ張っていくふたりのキャラクターがとっても魅力的で終始引きつけられました。ラストシーンも感動的で、余韻がじんわりと後を引く素晴らしい作品。
一作目からこれを作る監督も、役者さんたちも、今後の活躍が楽しみ、要チェックです。
nccco

nccco