佐藤克巳

十日間の人生の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

十日間の人生(1941年製作の映画)
5.0
陽の当たらない名画とはこの作品を言うのかと感心した名匠渋谷実監督初期の傑作。日本の果て択捉島に漁の出稼ぎに行く事になった薄幸の娘田中絹代が、根室港?の宿屋女中をし乍ら滞在中に、山師の義父水島亮太郎が訪ねて来るが手紙を書き残し海に飛び込み自殺する。現場を目撃した二人の内、缶詰工場?に勤務する高田浩吉が傍観し、高田の父井上正夫が船長の船員山田巳之助が救助に飛び込んだ。高田は、田中に申し訳なさに苦闘の末択捉行きを交替するが、遅れて乗船した井上は、引退を撤回してその息子の身代わりに漁に復帰する。そして田中には自分が父になってやり、高田には工場に戻れと指図する。いよいよ出航前、山田が餞別と手渡した財布は酒場で井上からくすねた物だった。最果ての地港町の青天鮮やかな映像が美しい叙情詩。
佐藤克巳

佐藤克巳