マルコ・ベロッキオ監督初鑑賞。
ジャケのせいか、恋愛映画のイメージが先行し過ぎてなかなか鑑賞に至らなかった今作。
イタリア人ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニによるベストセラー自伝小説の映画化。9歳の時、最愛の母親を突如失い、深い喪失感を抱えて大人に成長した主人公の苦悩と再生を描いていく。
冒頭から好みの雰囲気を察知し一気に引き込まれる。そして良作を確信する。
イタリア・トリノでの少年時代、そして40年後のローマ。現在と過去を交錯させながら、主人公の心の移り変わりが繊細に丁寧に描かれていた。
一見、取り留めもないエピソードを連ねただけのようにも感じる。ただ、画面に漂う重厚感とメタファーの散りばめが実に効果的。
プールでの飛び込み、窓から落下する置物…
中でも、戦場ジャーナリストとして訪れたボスニア紛争の地での母と息子のエピソードが重く、強烈に主人公のメタファーとして刻まれた。
親の気持ちを理解するには、やはり同じ年月を要するのかも知れない。もっと言えばこの種の傷が癒えるには一生かかるのかも知れない。
ちょっと『アフターサン』を思い出した。