Fitzcarraldo

パーフェクト・ボウル 運命を賭けたピンのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.6
2016年に製作されて日本では未公開のチェ・グッキ監督・脚本のデビュー作品。この人の情報が探せど探せど見当たらず殿方ということしか掴めなかった…しかし侮るなかれ何の情報もない無名の監督だからといえスルーするにはもったいないほどクオリティの高い一作だと思う。

韓国映画のクオリティの高さは言うに及ばずなのだが日本未公開でB級映画然としたパッケージでも、このハイクオリティなのだから天晴れである。

邦画界でもアニメ原作やらJホラーやら、いつまでもいつまでも同じようなことばかり繰り返してないで、本作のように大したスターも終始出てこない地味めなキャストでバリバリ推していく快作を期待したい。

では物語の話を…。

本作は伏線の張りかたと、それを小気味よく回収していく様がとにかく素晴らしい。邦画でお馴染みの台詞で何でもかんでも説明していくのは一切なく、人物と人物の関係性や性格などは全て映像で語っているところに非常に好感がもてる。

人間は自分のことだってわからないのだから、未知なるものは未知なるものとしてそのままにしていた方がずっといいと思う。未知なる部分を台詞で限定されるよりも…。

秀逸なる伏線を一つずつ挙げて褒めちぎりたいのだが、ネタバレというか、何も知らないで見た方がスッと刺さると思うので語るのは控えたいが、『チョコレート・ファイター』のジージャー演じるゼンを見るような感覚になるとだけ言っておきたい。

全く期待しない方が跳ね返りも大きいと思うので、あまり期待せずに寝る前の睡眠グッズのように見ることをお薦めします。

それでも明らかに気になるところが一点あるので、ここに記したい。見ようと思う方はここから先は読まないでいただきたい。



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ラストのプロになったヨンフンが靴もピカピカ衣装もそれらしい格好に変化していたが、それだと整合性が取れてないと感じる。あの場面はボロボロの靴のままで良かった。彼はそれでプロになったのだし、あのままの状態で有り得ない強さを誇ってた訳だし。
あの場面は時間経過と、その間にしたであろうヨンフンの成長を一瞬の画で見て判断すべくしたのであろうと想像できるのだが、そこは余計な優しさだと感じた。

野球賭博や相撲賭博が表面化している日本なのだから、思いきって其処らを映画にした快作を邦画でも期待したい。
Fitzcarraldo

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