ベルサイユ製麺

パーフェクト・ボウル 運命を賭けたピンのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.4
ファイティン連呼!
恐らく最多ファイティンを記録しましたよ!

ボウリング!吾輩も玩具のアンパンマンボウリングはなかなかの腕前だが、あれはまあレギュレーションが無いからなぁ。オーバースローでも良いし…。
ボウリングをテーマにした長編フィクションが意外と少ない(ほぼ無いかも?)のは、恐らく他のスポーツよりゴールが明確なせいかと思います。“パーフェクトゲーム”を達成しちゃえばそれより先が無いですからね。その上でそれでもボウリングを題材にするとすれば2つのメソッドが考えられます。
①超人ウルトラボウリング。プロ・猿的にボウリングのルール自体を壊す。登り坂レーンやローションボウリング、紙ヤスリレーンにマッチの薬ボールなど。こっちはチャウ・シンチーがそのうち撮るはず。
②カムバック物。負傷やスランプからの回復物にする。そんなに尺が取れませんが映画にはきっと向いてます。で、実際今作はコッチでした。

原題は『スプリット』。成る程ー、上手いね。
元プロボウラーで韓国代表(とは?)にまで登りつめた男チョルジョン。しかし今や訳ありの怪我で足を引きずり、日々呑んだくれ、時折誘われては仲間?恋仲?のヒジンと賭けボウリングなどで小銭を稼ぐ。
ある日、バイト先のボウリング場で見かけた青年。彼は謎めいたルーティン、珍妙なフォームから精密機械のような投球でストライク連発!コレは即戦力とばかりに彼を仲間に誘うチョルジュンだが、どうにも上手くコミュニケーションが取れない。彼、ヨンフンは軽度の知的障害と自閉症を持っていた…。

泣かす…。コレは泣かす系の良作ドラマだ!冴えない、陽の当たらない人達が地べたを這いずり回ってるだけで泣けてくるのに、彼等は皆それぞれの事情、過去を背負って強く生きている!コレが泣かずに居られようか⁈…まあ、実際は泣きはしなかったのだけど、とにかく韓国のスポーツ物の映画はもれなく良いなコンチクショウ。3人のチームワークが噛み合い快進撃の前半はカタルシスに溢れ、しかしチョルジュン、ヒジン、ヨンフンにはそれぞれの目標があり、その為に彼等の友情、愛情は捻れながらぶつかり離れ、悲しみのスパイラルで捥がく後半の展開…。もう号泣です。…まあ、してないけど。
なんと言っても主演のユ・ジテが良い!善良でこそ無いけど決して悪人では無い、欲と正義の間で揺れる男を絶妙の佇まいで演じてみせます。
毎度の事ながらちょっと悩ましいのは、知的、精神的ハンディのある人物の役を役者さんが上手に演じるという事への割り切れなさが有りまして、ヨンフンに対する複雑な感情は、最後まで棚上げのままでした。
悪のボウラー、トード役のチョン・ソンファ。なんたる憎たらしさ!トムとジェリーのトムみたいにボウリングのピンにしてやりたい!

ヒジンは自分の所有する潰れたボウリング場を再興する為にガムシャラになってるのですが、例えばボウリングファンにとってのボウリング場、映画ファンにとっての映画館(…滅多に行きませんが)って、いわば家庭みたいな物ですよね。そりゃ頑張るよ。因みに、潰れたボウリング場見るとAKIRA(踊ったり髭生やしたりしない方)を思い出しちゃいますね。カーネーションというバンドの“アンブレラ”という曲に「潰れかけたボウリング場で」「潰れそうな映画館で」というフレーズが有ります。とてもとても好きな曲。

肝心のボウリングのシーンなんですが、やっぱり撮りようが無いというか、割と普通です。それでも、スーパースローでゆっくり飛び交うピンの様子は臨場感アリです!スポーツ物として充分成立してますね。
個人的にはちょっと後半の展開がくどく感じるのと、人間ドラマがウェット過ぎるのは気になりました。まあ、韓国映画らしいとも言えますね。
もう充分におススメ出来ます!ファイティン!!ミルキス飲みたい!ビッグボトルの!
サランヘヨ〜ミルキス。