さく

デトロイトのさくのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
2.5
デトロイトでこのような暴動があったという歴史的事実は、この映画を通して初めて知りましたし、白人警官による黒人への迫害に関しては、『ストレイト・アウタ・コンプトン』よろしく「ファック ザ ポリス!」だと思いますが、映画としての完成度としてはどうなんでしょうか…というのが私の感想です。

以下、ネタバレしまくります。一回のみの鑑賞ですので、見落とし、誤解、曲解などはあるかと自覚しております。

正直言って、私の感想としては、脚本、それに伴うストーリーがダメすぎます。ドキュメンタリータッチで緊張感に関しては物凄くよく演出されてるだけに、細かい破綻(と私には思えた)が物凄く気になってしょうがない。

まず、そもそもことの発端となった、「おもちゃの銃」による「発砲」ですが、こんな状況であんかことしたら警官から迫られても自業自得じゃね? ってところ。周りも止めてんのに、アホか? これはまあ、事実に即してるわけだし、鬱積した恨みもあるし、「若気の至り」が引き起こした思わぬ悲劇…と捉えられないこともないから受け入れますよ。

ここから先が色々おかしくて、ウィルポールターがクソ野郎なのは否定できない事実ですけど、少なくとも、「事件解決」を目指してはいるわけじゃないですか。ただ黒人を痛めつけたいだけの差別的なキチガイではないんですよ(この映画の流れ上)。

なのに、何故、「銃声はおもちゃの拳銃による音だ」と黒人側な自供しない理由がさっぱりわからん(この映画からは)し、何故、おもちゃのピストルが発見されないのか? もさっぱりわからん。例えば、おもちゃの拳銃は発見されたけれど、警察が「これはまずい…」と隠蔽するならわかりますよ。

繰り返しになりますが、ウィルポールターは、別室に黒人を隔離しながらも殺害は「したふり」にして脅しながら、事件の解明に勤めているわけで、やり方はまずいかもしれないけれど、目的は「スナイパーを見つける」という真っ当な動機に基づいているわけです。

そこで、もう一人の白人警官が殺人を犯してしまうわけですけど、ある意味クレバーなウィルポールターが「これは脅すための演出だから」と事前に伝えないのは、どう考えてもおかしいでしょ? 「ほんとに殺したんか!?」ってお前が指示したんやろ!

また、ここで、「これはまずいことになった…」みたいになるのも、おかしくて、そもそも最初に一人殺してるわけだし、それは「反抗してきたんや」みたいに片付けてるでしょ? その殺人とこれと何が違うの? 何を今更「やってもうたか…」みたいになってるのかが全く理解できません。

文句言い出すとキリが無くなってきましたけど、思ったことをとことん言いますよ。

終始一貫、「白人警官はクソ」みたいな感じになってますけど、死にそうになってるところを助けてくれて病院に運んでくれたのも白人警官ですよね? 映画のメッセージとして、「一部クソみたいな白人警官がいたけれど、全部が全部そうでもなかったんやで」というのを伝えてくるなら理解できるけれど、一貫して「白人警官はクソ」というメッセージを発しながら、このシーンを入れるのはおかしいですよ。

ツッコミどころが多すぎて疲れてきましたが、黒人の警備員を警察が問い詰めるシーンは「あーやっぱり白人クソだぁ」と思わせるけれど、その後、警官二人の自白によって、白人側を問い詰めるわけです。全然差別的じゃないじゃねーかよ!

この時点で、ウィルポールター以外の二人の白人警官は良心の呵責を感じて正直に白状したんやなぁ…と思いきや、裁判で無罪となるや「やったー! 助かったなー!」とか言ってウィルポールターとハイタッチとかしてて、自分の犯した罪に精神を病んで統合失調症にでもなったのか? と思いましたよ。

扱ったテーマ自体は意義深いものだと思いますけど、それと映画の出来は別物として評価されるべきかと思いますよ。
さく

さく