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デトロイトのmickeyのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
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キャスリン・ビグロー監督と『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で有名になったジョン・ボイエガ目当てで新宿で観ました。
鑑賞後、気持ち悪くなりました。

本作はデトロイトで起きた白人警官による黒人暴行殺人事件、アルジェ・モーテル事件を元にしており、きつい内容なのは覚悟していたものの冒頭から「嫌な予感がする」場面ばかり。
というか、嫌な予感しかしない。
ビグロー監督の『ハート・ロッカー』や『ゼロ・ダーク・サーティ』は戦場での見えない敵との緊迫感に目が離せませんでしたが、本作は目を背けたくなる場面が多い上に、達成感もなく最後に報われる話でもない。
ジョン・ボイエガ演じる警備員メルヴィンはフィンより有能で落ち着いた人物ですが、事態を打開することはできずその場を生き抜くことしかできません。
「後味が悪い作品」という表現がありますが本作はずっと最低なので、正直「面白かった?」と聞かれると返答に困ります。
ただ、本作にはフィクションにはないリアルな差別と悪意があります。

ウィル・ポールター演じる白人警官には一切共感できませんが、彼がストレスや悪意を溜め込んでいく様子がリアルでした。
暴動で夜も出動しないといけない、銃声がしたからモーテルに来てみれば黒人が楽しそうに騒いでいる、白人女性もいる、黒人を銃撃して注意されたばかりなのにまた殺ってしまった。
例えば、自分は仕事で疲れているのにこいつは遊んでいるとか、自分は彼女がいないのにこいつは女性と付き合ってるとか、自分は不幸せなのにこいつは幸せそうだとか、そういう日常の妬み、僻みが正義という権力があると捌け口が黒人へ向かう様が生々しかったです。

誰しも日常生活でストレスや嫉妬など負の感情を持つことはありますが、それを差別に結び付けず、自分の負の感情に自覚的でありたいと思いました。


全米のBlackLivesMatter運動で本作がまた注目されていますが、この事件は夜中に密室で起きたのに対し、50年以上も経った現在はこれが昼間の路上で起きていることに、暗澹たる気分になります。
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