とうがらし

冬構えのとうがらしのレビュー・感想・評価

冬構え(1985年製作の映画)
4.0
山田太一×笠智衆三部作の2作目。

ある日、老人は東北に訪れ、旅館に泊る。
若い女中(岸本加世子)がテキパキ仕事をしている。
老人はことあるごとに女中にお駄賃を与える。
女中は有頂天になるが、この老人はなぜ?と訝しがり、何かがあると察知して彼氏と共に老人を探す旅に出て、老人と再会できれば、道が開けるのでは?と希望を抱いている。
老人は6年前に妻に先立たれ、老いに耐え切れず、死を決意。
最後の旅立ちの準備をしていた…という話。

「病院で、あるいは、子どもの家で、まるで廃品のように生きるかもしれんという恐怖を感じております」

「生きる」(黒澤明監督)×「幸福の黄色いハンカチ」(山田洋次監督)
前作の「ながらえば」と打って変わって、お金があり余る老人の孤独を描く。

戦前の人間として、人前では決して涙を出すまいと考える笠智衆が、山田太一に懇願されて、涙を見せた作品。
山田は笠の涙を絶賛し、笠は違和感を抱いた。
確かに、映画では、直接見せずに想像させる演出・演技というものがある。
あの涙は見所の一つではあるが、テレビドラマと映画の折衷案にも感じ取れる。
映画畑に生きる笠と、ドラマ畑に生きる山田の違いが涙のワンシーンに表れる。

老人は死を前にして、ゆきずりの恋をしたり、寝たきりの旧友に会いに行ったり、女中の彼氏の祖父(独居老人)と巡り合ったりする。
物語はどこかヨーロッパ映画の香りがする東北の旅。
東北の観光名所を巡り、老人と若人2組の旅を通じて、生きるとは何かを考えるロードムービー。
世界的な知名度うんぬんは別として、ビル・ナイ主演でイギリスリメイクするなら本作の方が合っていたかもしれない。
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