ベビーパウダー山崎

冬構えのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

冬構え(1985年製作の映画)
3.5
笠智衆が死に場所を探し彷徨う。子どもや孫との関係が円満なのは、まだどうにか健康であり、誰にも迷惑をかけていないからで、これが耄碌し始めると、そうもいかない。旅ができるほど元気なうちに自殺しようと思う。
寝たきりの小沢栄太郎、僻地で孤独に生きる藤原釜足。ここまで歩んできた道が違えば、最期の姿(選択)も三者三様。笠智衆が自殺するのかどうかまでは描かれていない。
肉体的に救済する(延命させる)ことは可能だろう、だが、他人にいくら寄り添ったとしても、その深く沈んだ心を救うのは難しいんじゃないか。「大丈夫」「生きていてほしい」とか、偽善的な安い台詞で終わらせないのは、さすが山田太一。言葉の重みを誰よりも理解してる作家。それぞれの人生がまずあって、脇のキャラクターだからといって物語に都合よく利用されない。生き方も考え方も一人一人違う、だからこそ人間(キャラクター)がはっきりと浮き出てくる。NHKドラマなので演出はペラペラ。山田太一のシナリオと老人の役者に100点。タクシー運転手のせんだみつお、意外と芝居がうまい。若き岸本加世子が鬱陶しいのは変わらず。