さりさり

冬構えのさりさりのレビュー・感想・評価

冬構え(1985年製作の映画)
4.2
「笠智衆/NHK3部作」第2弾。
今回は、妻を亡くしたおじいちゃんの “一人旅” を、笠智衆が哀愁たっぷりに演じている。
第1弾の『ながらえば』とはまた少し違う、元気で紳士的なおじいちゃんなので、今回はハラハラすることなく安心して観ていられると思う。

なんてったって、旅先でナンパまでしちゃってるし! 笑
おじいちゃん、やるじゃん! 笑
他にも、泊まった旅館の仲居さんに高額のチップを弾んだり、キャバレーで散財したりする。
親しくなった若いカップルに、惜しげもなく札束をポン!と渡したりもする。
とにかくお金の使い方がハンパじゃない。

でも実はこれ、小粋なおじいちゃんの気まぐれ贅沢旅行ではない。
旅の目的はちゃんとあるのだ。
徐々に明かされていく、旅の本当の理由。
その真実に、私たちはまたしても打ちのめされてしまう…。

秋の東北。
画面いっぱいに映し出される色鮮やかな紅葉。
その美しさが、人生の終盤を迎えた老人の生き様と重なる。
人も樹も、枯れ際の一歩手前に深みが増す。
円熟した美しさ。
切なさ。
心の奥に秘めた激しさ。
そのひとつひとつが、観る者の胸を打つのだろう。

前回の『ながらえば』では宇野重吉さんとの世界遺産的なツーショットがあったが、今回も国宝級のツーショットがある。
堪能した。
画面に釘づけだ。
次回の完結編が楽しみ。
今度はどなたとのツーショットがあるのだろう。
期待は高まるばかりだ。
さりさり

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