不在

グッバイ・ゴダール!の不在のレビュー・感想・評価

グッバイ・ゴダール!(2017年製作の映画)
4.4
我々はゴダールの映画を革命と讃える。
それは主に映画の構成そのものを指す場合が多いが、彼が求めていたのは本当の意味での革命だった。
つまり賞の数や興行成績、観客の反応のみで作品の評価が決まる映画的民主主義を打ち倒す事。
ゴダールは独裁を望んでいたのだ。
彼は毛沢東やゲバラに、映画監督としての自分を重ねていたのだろう。
残念ながら彼はゲバラではなく、毛沢東に近かった。
これまでの映画という文化を破壊し、好きな事を言わせておいて後から批判ばかりしている彼の姿は百花斉放的とも言える。
そして歴史が示す通り、独裁者にはそれを支える者の存在が不可欠だ。
ここで彼の矛盾や葛藤が生まれる。
彼の求める映画には観客や商業的成功、つまり民主的な側面が必ず必要だったのだ。

彼は常に自分の為に映画を撮っているつもりだった。
確かに映画そのものに革命をもたらしはしたが、芸術の世界における商業主義を打ち倒す事は出来なかった。
かつての独裁者が、民主制に下るラストは切なくもあり、滑稽でもある。
不在

不在