あーさん

シネマ歌舞伎 女殺油地獄のあーさんのレビュー・感想・評価

シネマ歌舞伎 女殺油地獄(2009年製作の映画)
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シネマ歌舞伎2022 第3弾

観てからしばらく日が経ってしまった。
少し落ち着いたものの、相変わらず仕事で余裕のない日々。。
そんな時にも、シネマ歌舞伎だけは今年は皆勤賞を!と思っている。
私にとって、かけがえのない癒しの時間。

ドキュメンタリーを観たり、歌舞伎やその他伝統芸能の特集などを観て、歌舞伎のお芝居がどのように創り上げられているか、更に役者のインタビュー等で舞台裏を知ると、ただ漠然と観ていた時よりも、沢山のセンサーでもって観ることになる。
その身体能力を維持する為のお稽古の厳しさ、体力的な大変さ、絢爛豪華な衣装やかつらの重さや取り回しの難しさ、長唄や鳴り物等の絶妙な間合い、それら全てを総合した舞台を観ているだけで、ものすごいパワフルな熱量に圧倒されるのだ。
目や耳や色んな感覚に訴えてくるのを、全身で受け止める芸術鑑賞。

片岡仁左衛門。
ドタバタした大阪ではなく、はんなりした上方の良さ、品の良さを持ち合わせた役者さんで、とにかく色気がものすごい。
クズのような役が多いが、この方が演ると下品にならず、お芝居に昇華されて、美しささえ感じられるから不思議だ。
2009年の舞台なので、13年前という事は、仁左様65歳位?
まだまだ、男盛りが十分通用する。

今作もかなりヤバいクズ男、実家が油屋を生業とする河内屋与兵衛(片岡仁左衛門)が主役。
こんな男が出てくる現代の邦画を観ようものなら、舌打ちの一つや二つでは足らず、途中で観るのをやめてしまうところだけれど、舞台の時代や場所、設定が変われば何故か一つの物語として観れてしまう。

家庭内暴力、金の無心、借金、芸者に入れ上げ働かない、挙句の果てに、、
もう、こんな息子いらんわ!と言いたくもなるのだが、実の父親に死なれて、母親が店の者と再婚した為に、継父も強く息子に言えない。
クズな息子でも出ていくとなれば、
可哀想になって情けをかけてしまう親。
そんな親や、同業のよしみで親切にしてくれるお吉につけ込む狡猾な息子。
仁左様じゃなかったら、見てられへん、、

クライマックスの油まみれになりながら…のシーンは圧巻で、もうこれで、仁左様のこのお芝居が見納めとなったのも仕方あるまい、と思うほどそれくらい恐ろしく長くて、壮絶なシーン。。役者陣の身体能力の凄さよ!
(暴力的なシーンや人を殺めるシーンが、歌舞伎は直接的でないのが個人的には助かる。リアルなのは苦手💦)

お吉役は、片岡孝太郎。
"小さいおうち"で松たか子の旦那さん役だったのを覚えている。
なんと、仁左様の息子!
そして、その息子 千之助も娘役(ややこしい、、)で出演。
親子三代共演⁈ 豪華だと思ったら、歌舞伎座のさよなら公演だった。
それにしても、仁左様、自分の息子より年下の役で共演とは。。

しかし、親切が仇になり、何故こんなことになってしまったのか。私も、他人事ではないわいな。
厚かましい人に、つけ込ませたらあきません!
もっと早くに、キッパリと断らなあかんかった。いや、断ったんやけどな。。

狂気が宿った与兵衛の顔が、怪しくも艶かしい。

ギリギリのところで保った、仁左様の何とも言えない表情に、ゾクゾクさせられる。
こいつ、正真正銘のワルや!

これは、いけません。。

しかし、これぞ、お芝居!
これぞ、歌舞伎!

いやー、、今回もやられましたわ。
ザ・近松門左衛門の世界!

若者の孤独と狂気。




最近は、お三味線やお囃子を聴くと落ち着くようになってきた。
録画したお芝居を流しながら、身支度をしたり。
すっかり、身体に馴染みつつある。

歌舞伎ライフ、楽しい♪


(大河ドラマ"鎌倉殿の13人"に出演中の坂東彌十郎さんも出てます♪)
あーさん

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