かず

テキサスタワーのかずのレビュー・感想・評価

テキサスタワー(2016年製作の映画)
4.3
「芸術が創作される意義」を示してくれる素晴らしい作品。

銃乱射という突然降りかかる不条理、次々と殺される周囲の人々、ただ黙って静観することしかできない悔しさ、苦しんでいる人を助けられない罪悪感。

多くの人の心に深い傷を残した。多くの人の人生を変えてしまうほどの重大事件。

しかし、その中で、人間の生への強い意志、自分の身を危険にさらしての利他的行動、見ず知らずの一般人同士が団結して犯人に立ち向かう勇気、被害者による犯人への深い洞察に基づく許し。

そして、米国に限らず、銃乱射事件が多発する現代社会への痛烈な批判。
誰でも生まれた時、子供の時は純粋無垢。そのような普通の人間が、このような大量殺人を犯すようになる社会・環境にこそ問題があるのではないかという問題提起。
現代社会における、政府による過剰な自己防衛主義に基づく銃社会、漫画やTVや映画による悪影響、生命への畏怖の念の欠如。
「この事件は、社会の犯罪(罪)である。」

本作のインタビューで事件について語ることにより、多くの関係者が癒されていく様子もよかった。
悲劇こそ、忘れてなかったことにするのではなく、非常に辛くても語ることで、後世に伝えることができるし、自分の癒しになるのだろう。

「芸術が創作される意義」は、この作品のように、傷ついた心を昇華するものであるべきだし、それを芸術と呼ぶのだろう。

エンドクレジットで流れるドビュッシーの『月光』が沁みる。。
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