イルーナ

フォービデン・ゾーンのイルーナのレビュー・感想・評価

フォービデン・ゾーン(1980年製作の映画)
4.5
「悪いことってどうしてこんなに快感なのかしら」

ティム・バートン作品の音楽でおなじみダニー・エルフマンが映画界に入るきっかけとなったカルト映画。
『オインゴ・ボインゴ』が音楽劇団だった時代の『ザ・ミスティック・ナイツ~』がショーでやっていたことを残すため映画にしたものらしい。

その内容は、まさにアングラ劇団の芝居を見ているかのような気分になるイミフさ、下品さ、ハチャメチャさ。
どこを見渡しても変人しかいない世界観。六次元世界どころか現実世界ですら性欲オバケやらオカマやらドMやらそんなのしかいないw
どう見ても大人なのに学校に行くというだけでもアレですが、普通に銃撃戦が行われるなど治安は最悪の一言w
弟がタケコプターつけてるな~と思ってたら、本当にそれで空を飛び出したのには笑ったし、首チョンパされた奴の頭に羽が生えて飛べるようになってたのは、南米の妖怪チョンチョンを思い出した。
セットは本当に学芸会レベルのチープさなのに、時折挟まれるアニメはフライシャー兄弟やテリー・ギリアムの影響を受けただけあって完成度が非常に高い。
序盤の食卓が六次元世界化する場面なんかセンスありすぎる。
そのギャップが素敵。特典映像を見たらすべて一人の方が手がけたらしい……スゴイ!
ですが、六次元世界に行くときのアレ……せめて産道にしてよ(苦笑)というか、普通は「生まれ変わり」の意味を込めてそっちにしない……?
モノクロの映像も相まって悪夢じみていて、本当に「い、一体何を観てるんだ……?」という気分になること請け合い。

しかし、『オインゴ・ボインゴ』なだけに曲は印象に残るものばかり。
OPからしてカッコいいのなんの!もうここからハートをつかまれるというか、何度もリピートしたくなる中毒性がある。
ダニー・エルフマンが出てきた時は思わずにやけてしまう。素敵な美声からの『ミニー・ザ・ムーチャー』だし。
ラストも罪と快楽の国を肯定し、宇宙征服を目指すという謎の壮大さと感動に満ちたもの。
さらに特典映像にはこのラストの歌の原型の映像が入っていて感動!
アニメ共々、学芸会レベルのセットとまったく釣り合ってない(苦笑)

観客に受けるかどうかは度外視、本当に作りたいものを作ったからこそ熱意が伝わるし、中毒性がある。
資金が底をついた時、家を売ってでも作ろうとしたくらいだったらしい……その熱意はどこから?!『カップヘッド』みたいな話だ。
そしてこのあらゆる混沌をひっくり返したかのような世界観は、ある意味バートンの世界観に通じるものがあるかも?
イルーナ

イルーナ