KnightsofOdessa

Twilight of the Ice Nymphs(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
[マンドラゴラ、それは日の沈まない悪夢の迷宮] 70点

クヌート・ハムスン『牧神』にプロスペール・メリメ『イールのヴィーナス』とギュスターヴ・モローの絵画を加えてごった煮にしたというガイ・マディン長編四作目。カラー二作目にして色彩感覚がイカれたのかアメリカの不味そうなアイスみたな発色をしていて、『Greener Grass』とは別方向の"観るドラッグ"といった印象を受ける。主演のシェリー・デュヴァルを念頭に置いたであろう『シャイニング』のパロディと思しきシーンや、シャンタル・アケルマンが『オルメイヤーの阿房宮』のワンシーンの参考にしたであろう浸水するベッドのシーンのような遊びに満ち溢れていて、マディンの作品群の中では一番はっちゃけている。特に後者では浸水した後にベッドの上にロブスターが乗っているというマディンらしからぬギャグを披露していて驚かされる。

物語は刑期を終えたピーターが、日の沈まない故郷マンドラゴラ島のダチョウ農場に帰ってきて、農場を経営する妹、彼女が農場をあげると約束した農民、ピーターが帰りの船で出会った謎の女性、島の支配者に巨乳のヴィーナス像を加えた六角関係に振り回されるというもの。昼ドラ以上にドロドロした人間関係を延々と舐め回すだけなので些か退屈だが、上記の遊び心に溢れたシーンを微妙なタイミングで入れてくるので不思議と最後までたどり着けてしまう。

ちなみに、本作品の製作舞台裏を描いたノーム・ゴニックのドキュメンタリー映画『Waiting for Twilight』ではマディンがプロデューサーの度重なる介入にイライラしている状況が語られている。その後、短編映画やCMは作るものの長編映画は作らない時期が5年ほど続く。復活するのは世紀を跨いだ2002年だった。
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