燕鷲

あさがくるまえにの燕鷲のレビュー・感想・評価

あさがくるまえに(2016年製作の映画)
4.5
昨年、日本で公開された海外作品の中でも特に印象に残った1本。個人的には2017年の最優秀ラストカット賞だと思う。エンドロールを迎えた瞬間の静かな余韻と、やがて込み上げてくる温かな感情は筆舌に尽くし難い。優れた文学を読み終えたあとの読後感、とでも言えばいいだろうか。

お話自体はとてもシンプルなものだ。ドナー側とレシピエント側、その(互いの事情を永遠に知ることのない)両者の“魂”を繋ごうと医療の最前線で奮闘する者たち。効果的な省略を用いながら、それぞれの心情を繊細に紡いだ群像劇である。

とりわけ、移植コーディネーターであるトマの存在が大きい。彼の医療従事者としての(いや、人間としての)誠実さを物語る、終盤のあの対応には誰もが胸を打たれることだろう。

封切りから年明けにかけて、計4回も劇場に足を運んだこの映画。どうやら自分はまんまと“ハート”を鷲掴みにされてしまったようだ。
いよいよ今日、4月6日からレンタルが開始されるようなので、気になっている方には是非とも観てもらいたい。
エンディングで David Bowie の “Five Years” が流れ始めたとき、きっとあなたの胸にも新しい朝が訪れているはずだから。
燕鷲

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