ソフトでクラシカルで、なんて優しい映画。
けれど人間の持つ残虐な部分からも目をそらさない。
そういう意味ですごく誠実なファンタジーになっていて、映画そのものよりも監督に興味がわく。オタクとして有名なギレルモ・デル・トロ。
考察できることはたくさんあるんだけど、こんな時代に「とにかくまっすぐ愛を全肯定して作られた映画である」っていう映画そのものの持つメッセージの前で、特に発すべきと感じる言葉がないです。
むしろまっすぐすぎるくらい。笑
変な仕掛けがあるようでない。拍子抜けするくらい。
人間同士の性行為よりよっぽどムーディに、美しく撮られているイライザたちの絡み合い。監督さんは人外に対する愛がそれはそれは深い人なのだとか。
監督自身もメキシコ人であり、ハリウッドからしたらアウトサイダーな立場。聾唖者、同性愛者、体制に反抗するもの、黒人、エトセトラ。マイノリティが多数登場するだけでなく、マジョリティ側の人間も内面まで描く。
イライザが途中から赤い服装をし始めるのが、愛の芽生えと重なる。当時の文脈では共産党を想起させる色合いが、本来は愛を想起させる運命の色。視覚的にも詩的に作りこまれている。
わたしはファンタジーをもはやファンタジーとしてしか見れない大人になってしまったので、むっちゃ心にしみたわけではないのだけれど笑
良い映画です。とても。