イライライジャ

シェイプ・オブ・ウォーターのイライライジャのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

半魚人を助けないのは「人間じゃない」と豪語していたが、ストリックランドを簡単に殺す半魚人を匿って愛欲だけを優先する女こそ「人間じゃない」と思った。実際半魚人エンドなわけだが、ストリックランドは妻と子供2人と幸せな家庭を築く仕事にストイックなだけの男なのに「悪」とされている。

確かに純愛ではあるが、純愛というのは私利私欲のために何かを捨てることを厭わない。女は友人も地上も生活も全て捨てることを選択したわけだ。
映像は美しいし映画として傑作ではあるけど、手放しに絶賛は出来ない。善と悪とは何なんだろうと考えてしまった。
動物が殺処分されるのを防ぐために屠殺場の人間殺す的なそういうモヤモヤ感。

監督はヒーロー像と悪役を意図的に逆転させたと語っている。そして本作に感銘を受けるかは観る人の本質に寄ると。まさしく私は善と悪を逆転させたことに疑問を抱く側なのだろう。
半魚人は話せない女の人生を救ったヒーローであるが、人々にとっては脅威の存在。そして半魚人にとってストリックランドは脅威の存在。
観る側の価値観や倫理観によって意見が分かれる物語になっていた。

お伽話というのは主人公以外の人生なんて案外お構いなしなのだ。
そういった “お伽話のエグさ” が絶妙なバランスで表現されていた。