movieJack

シェイプ・オブ・ウォーターのmovieJackのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

朝からの降雨で何も出来ないからと自分に言い訳しつつ
ビショ濡れで朝イチ人がまばらな劇場へ
雨が似合う今作には最高のシチュエーション

また第90回アカデミー賞発表当日に情報を何も入れないまま慌てて観賞したが
私的には作品賞は観賞済の「スリービルボード」だろうと
そして取って欲しいとも思っていたが…
観賞後は
なるほどこれは一騎討ちか…とまだ観賞していない作品が有るにも拘わらず素人目線ながらに年に一度の興奮を覚えた

冒頭から水中・水面・波紋・雨・水滴等の映像が続きウォーター(水)のイメージが印象付けられ
水は何にでも
染み込み・溶け混ざり・ボイルのため様々な温度にも変化し・上から下へ自然と流れるが
それと対局にある人間の決して交われない壁や
凝り固まった概念等が見え隠れし
主人公はもちろん
隣室のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)の孤独感にも
同じ中年男としては痛々しさが共感できる部分が感じられた

主人公は河の近くで拾われ
声帯を損傷して話せない女性イライザ(サリー・ホーキンス)
言葉を持たない彼女は他国籍人や他人種的に感じられたが
親しい人とはコミュニケーションもとれると共に
仕事も料理も手淫も💦普通にし
思考や内面的には我々と何ら変わらないが
彼女の受けてきた差別的なコンプレックスは計り知れず
清掃員という人物設定は
今作でもそうだが現代でも
まるで透明人間の様に感じられている存在であり
最近のどの映画を観ても出演している感のある存在感たっぷりの愛しきガチャピン(愛情表現です)
同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)があれだけ大声で話しても誰も見向きもしない…
身近に居り必要な職種なのだが軽んじられる傾向にあり軽蔑の対象として
観客にも警笛を鳴らしているよう

また
アマゾン?方面から連れてこられた半魚人的な不思議な生き物との関係性
マイノリティー同士が惹かれあい
彼女も実は…的な憶測等なファンタジー要素も余韻が気持ち良く
種族や偏見等の垣根を越えた深い愛を描くSF的寓話作品

奇形や人種や宗教等の差別を微塵も感じさせない彼女の一目惚れ感
これが理解できないと言うならば
それこそが偏見では…というメッセージだろうか
私も異人種カップルを見掛けると二度見してしまうし
もし我が娘から彼氏として紹介されると違和感無く受け入れられるだろうか…

マイケル・シャノン演じるストックランドはアメリカを象徴するような存在と感じたが
イライザが雄弁に語る手話に対し
噛みちぎられる指と同時に落ちる結婚指輪にはその夫婦の関係性とも思えたし
支配する側であった彼が次第に理性を持たない怪獣のように
その指も差別対象であった黒人のように壊死し真っ黒になる上手い逆転劇

それに加え過去の名作映画オマージュ等の映画愛も多彩で
また今作でも自分の映画知識の無さが情けない…

また全編通して音楽が流れ続け音楽映画という印象も受け
また二人のダンスシーンには「ララランド」の雲上のダンス的に一瞬驚いたが
私的には「グレイテストショーマン」のそれよりグッときた
グレイテスト…でも主人公に蔑まされた後に皆が心の叫びを熱唱するシーンは素晴らしかったが
やはり作品としてマイノリティーが主役のストーリーと搾取する側が主役とでは少し違う…

しかし
ギレルモ・デル・トロ監督のこれだけ多様なテーマをまとめ上げる手腕と映画愛は素晴らしく

特に首の傷の使い方
完治して素晴らしい人生が始まるのでは?…と予想させといて
完全にその上をいく水中での「クパッ💦」には唸らさせられた…
彼女の脱ぎっぷりとバスタブでの「クパッ💦」にも唸らさせられた事は言うまでもありませんが…

以前「パシフィック・リム」の町山智浩さん解説時に
監督は凄い日本好きで
アニメやロボットが大好きな超オタク
その監督が潤滑な資金で自分の好きな最高のロボット映画の最高傑作を作りあげ
来日時は新宿付近の居酒屋に入り浸り一緒に飲んでいる仲と紹介されていたのが思い出され

今回の
秘密基地感や
不思議な生き物も
監督の趣味満載とも思われ
日本の戦隊ヒーロー 「仮面ライダー アマゾン」的に感じられたのは私だけか…
特にダンスシーン

ソビエト?組織の清掃員に劣る無能さ…
雨を待たなくても直ぐそこに海が有るのでは…
あの治癒能力に学者達は気付かなかったの?神レベルの研究対象ですけど…
等々は寓話として言うだけ野暮で

解りやすいストーリー
綺麗な美術
素敵な音楽
応援したい善良な主人公達
私の好きな要素が揃った作品でした
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