美しく切ない愛の物語。
声を発することができないイライザ(サリー・ホーキンス)と異形の彼。
彼を見つめるイライザの表情が女性らしく情熱的に変化していくのが本当に素敵。
サリー・ホーキンスは地味な印象しかなかったが、全身全霊を込めた演技に圧倒された。
特に隣人のジャイルズに手話で訴える姿は、気高く美しかった。
ジャイルズ、同僚のゼルダ、ホフステトラー博士、日々の葛藤がありながら(あるからこそ)、彼らが立ち上がる姿に胸を打たれた。
テーマである水。美しい描写がいくつもあった。浴室、雨、海中のシーン。特にバスの窓の水滴のシーンは息を呑んだ。二つの水滴が踊るように流れて一つになる。まさか水滴がロマンチックに見えるなんて!
水が出てこないシーンの方が息苦しく感じる位、心地よく感じられた。
ストリックランド(マイケル・シャノン)は、わかりやすい悪役。周りを力でねじ伏せてきた彼が何度も「まとも」と言う言葉を使うが、言えば言うほど皮肉に聞こえてくる。心の醜さが指に表れている。
醜さがあるから、二人の愛も、より崇高さを増すのだろう。
デル・トロ監督のマイノリティへの愛に溢れた大人のファンタジー。心が潤った2時間4分だった。