fuming

シェイプ・オブ・ウォーターのfumingのレビュー・感想・評価

3.6
さしずめ『デルトロ版・美女と野獣』
恋と愛の美しさと儚さを見事な映像美で表現した怪作。
タイトルにもある通り終始『水』がクローズアップされており、それらの表現がとにかく美しい。降り注ぐ雨、何より風呂場のシーンはなんとも幻想的。また水という形無いものが生き生きと表現されているのが魅力的であった。他にも、劇中で度々流れるシャンソンやジャズ、家の建築様式やインテリアもこだわりが見られてこれまた美麗。50~60年代くらいのアメリカが舞台というのも、現代には無い哀愁やセンチメンタリズムを掻き立てることに一役買っているだろう。
欲を言えばもう少しヒロインと彼との心が寄っていくシーンや描写が欲しかったが、本作の通り恋愛に言葉は無用なのかもしれない。

この映画は、あらゆるものを美しく描ききったと思う。水の表現、ヒロインの弾む表情と心模様、友情、そして恋と愛。多少グロテスクなシーンや描写や生々しい人間描写はあるものの、その他の美しいシーンや物事を引き立てる要素、2人の恋愛を盛り上げる障害と思えば良いでしょう。恋愛には国境や言語や性別どころか、種族間すら関係ないという、非常に詩的で哲学的で、文学的な一作。
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