全国おにぎり協会

彼女の人生は間違いじゃないの全国おにぎり協会のネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

※だらだらと感想書き出し。

震災から5年後、いわきで暮らすとある人の話。
草も木も何も無いところに突然現れるやたら新しい空間。JRの路線が使えなくて代わりに出ていた高速バス。今とは異なる文脈のマスク。無人の街。
自分は被災していないが、当時わりと被災地を行き来していたので、確かにあった風景たちに懐かしくなる。5年経ってようやく瓦礫は見なくなったけれど、相変わらず「被災」は続いていた。
(更に7年ほど経った今は、もう少し計画が進んだのと新型コロナという異なる脅威がやってきたことで、当時観るのとは異なる気持ちなんだろうなとは思う。当時観ていたら、もっとグロテスクに感じていたように思う)

妻を亡くした父は娘のことを全然見ていない。自分と出会っていなければ妻は生き延びれたと言うが、その場合生まれてこない娘の気持ちをもう少し考えてあげて欲しい。写真展の後に海に妻へ上着を差し入れに行く。妻とのお別れの意味が強かったとは思うが、一緒に写っていた娘ではなく、妻のことでいっぱいなことが切ない。娘のことは気にかけないのに、近所の男の子のことは世話をする。ラストの犬も可愛がる。(多分)犬のために仕事する。最後まで娘のことを気にかける描写がほぼ無くて、ちょっとつらい。
娘は一見とても強そうに見える。守らなくても大丈夫そうに見えるから、守ってもらえなかったのかな。
父も喪失と戦っていて辛かったとは思う。被災者が被災者を支援しなきゃいけない構図は辛いから、強くは言えないけれど。娘の立場だとこれまた辛い。みんな辛い。

デリヘル店の男性・ミウラは、“仕事として”守ってくれるという。血の繋がりや愛なんてものよりも、かえって安心できただろう。ミウラは仕事を辞めた後も連絡をくれて、「いつか子どもを抱いてください」と主人公に言う。気にかけてくれる存在がいて、主人公は嬉しかっただろうなと思う。

市役所の男性職員は最初頼りなく見えたが、弟や他人のことをよく気にかけていて、いい人だなと思った。すでに頑張っていていっぱいいっぱいなところに「がんばれ」は辛いよね。外野の正論っぽい拳辛い。卒論マンはインタビュー相手の気持ちをもっと考えてくれ。マナーよ。

色々言ったけれど、なんだかんだ海での妻とのお別れのシーンは好き。泣いちゃうよ。
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最後に父が働くシーン、犬のためだと思っていたけれど、妻との別れをしっかりやって、娘や自分の未来のために働き出すという文脈だったのかな。喪失のその先という描写だったのかな。
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行方不明状態が続く「曖昧な喪失」は区切りを付けづらい。遺体が無くて明確なお別れができておらず、引きずっていた。そこからの海でのお別れ。

農業もできない状態が続いた後、ラストで土を耕すシーン。被災地としても1歩進展。