滝和也

日本侠客伝 雷門の決斗の滝和也のレビュー・感想・評価

日本侠客伝 雷門の決斗(1966年製作の映画)
3.7
若、若はカタギ
なんです…辛抱下さい!
カタギは喧嘩できない
って言うのか!

渡世から足を洗った
真っ当な興行師が外道と
大正芸能界の華、浅草六区
をかけての大立ち回り!

「日本侠客伝 雷門の決斗」

高倉健さん主演の東映任侠路線のシリーズも第五弾。遂に高倉健さんの一枚看板となっています。このシリーズ、基本は兄貴分がいて健さんは弟分で主演のパターンなんですね。今回は中村錦之助、鶴田浩二ら先輩のゲストはなし。この時期すでに健さんはこれと昭和残侠伝、網走番外地とシリーズを持つ東映の大看板になられたと言う事何でしょうね(^_^)

大正芸能界の中心浅草六区の朝日座に二代目信太郎(高倉健)が帰ってきた。ヤクザから足を洗い、平松興業社としてカタギとなった父や仲間にまた船員として船にのる事を伝えるが…その夜、父は自殺してしまう。朝日座は芸人たちを助けるため借金を背負い込み、それを裏でまとめたヤクザ観音一家に取られてしまう事になっていた。信太郎は老侠客の中川(島田正吾)、その娘ちせ(富司純子)ら仲間達と助け合い平松興業社を次ぐ決心をする…。

ド外道のクソヤクザ対足を洗ったカタギの究極の我慢劇…。ヤクザは手を出せるが、カタギは手を出せない。冒頭の若である健さんに老侠客だった中川のとっつぁんが言う台詞。ここに集約される。この後の台詞は更に酷い…親父さんは自殺するまで我慢なさったと…。今作は兄貴分がいない代わりに新国劇からこのとっつぁん、島田正吾さんを借りてドラマ性を上げてきています。味のある(癖のあるかな)演技で健さんや娘役の富司純子さまをもり立てます。

更に富司純子様の出番も増えていて、健さんに恋い焦がれる幼なじみなんですが…台詞増えた分だけ可愛さといじらしさ、惚れた女の美しさが増すと言う…やはり健さんに合うヒロインは富司純子様だけだとわかる作品になってますわ…。

他にもロミ・山田さん、この方これ一本だけです。確か小堺一機さんがお昼にやってた番組で晩年はよく見かけた気が…歌手メインだったみたいですね。ただこちらも綺麗で粋なヒロインを兼ねていて…待田京介さん、長門裕之さんを相手にドラマを回してくれてます。また大物ゲスト枠で村田英雄さんが馴染みの人気浪花節の講釈師で華を添えます。あくまで今回は華を添えるだけなのは第二作目との違いで惜しいかなぁ…。

鶴田浩二兄貴のいない分、我慢劇を更に癖強にして、他配役でカバーさらに、いつもの殴り込みを二段構えにしています。それは…確かに演技力の島田正吾さんを立てた形ですが、スピード感はやや足りず、やはり鶴田浩二兄貴には叶わない…かなと。ただ…その二段構えはあっと驚く展開をもたらします。今までもコメディリリーフとして見事だった関西の至宝藤山寛美先生が遂に大活躍すると言う…。これ関西受け良かっただろうなと。またいつもの邸宅への殴り込みでなく、芝居小屋襲撃も新しかった。広めなので健さん、寛美コンビの動きがダイナミックでした。

一枚看板にした健さんに恥をかかさないよう、ねられた脚本に凝った演出とドラマ性。名匠マキノ雅弘の間違いない監督ぶりのわかる作品です。たまにはこんなんも如何ですか(寛美風)
滝和也

滝和也