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あゝ、荒野 後篇のmのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
2.0
基本的には前篇と同じで、酷い所は相変わらず酷いし(女性の扱い等本当に酷いが、それについてあれこれ書き連ねる気は疲れてもう起きない)、それでもやはり山田裕貴とヤン・イクチュンは光っている。

少しだけ書き残しておくと、前篇でも相当酷かったモロ師岡の扱いは後篇ではもはやコントの域に差し掛かっている。
クライマックスで自殺研究会の少年(まさか彼が最後まで残る重要人物になるとは思いもしなかった、「イノセント15」の主人公がいつの間にやら大舞台に躍り出たな)がモロさんを背負いながらデモの前を通ると爆破テロが起こるシーンでは、あまりの陳腐さに「本気かよ」と思わず呟いてしまった。これで何かメッセージが伝わると思っているのか?

後篇で妙に強い存在感を放っているのがバリカンに惚れ込む『2代目』役の川口覚で、この人どこかで見た事あると思ったら隠れた良作「アレノ」で印象的だった人だった。バリカンと2代目が料理屋で腕相撲をするシーンは不思議と印象深い。


裕二役の山田裕貴は身体作りもボクシングの動きもかなり仕上がっていて、相変わらず強いボクサーにはとても見えない新次=菅田将暉が彼に勝てる要素は見当たらないのだが、そこをなんとか無理に勝たせる新次対裕二戦は歯痒さが残った。それでも山田の芝居は印象的で、ヤンさんと共にこの映画の良心となっている。

クライマックスの新次対バリカン戦はボクシングではなくもう心のどつき合いなので、ボクシングの技術は関係なく役者の気迫がモノを言う。リング上で対話するようにどつき合う主人公2人の鬼気迫る熱演は充分に観客の心に響くだろうが、残念ながらこのクライマックスを迎える頃には俺の心はもうこの映画に対して白けきってしまっていた。観客席で試合を見詰める主要人物達も熱演だが、それがまたしても空回りしている。

それにしても、劇中で誰とも深く関わらず感情もよく分からず仕舞いで、結局最後の試合会場にも姿を見せず、何者にもなれなかった恵子=今野杏南はいったいどこに行くのだろう。少なくとも作り手は恵子という登場人物について責任を取るつもりは特に無いようだ。
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