ししまる

アナと雪の女王2のししまるのネタバレレビュー・内容・結末

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とても丁寧に作られていると感じた。
特にキャラクターとキャラクターの関係とその発展が丁寧だと感じた。
アナとエルサ、アナとクリフの関係が本当に良い。
そのため、キャラクターがまるで本当にいる人間のように立ち上がっていて良かった。
アニメーションもとても美しく、一瞬一瞬がとても愛おしかった。歌も完璧に近いと思う。あの全てを歌にして伝えるかのような心に迫る声はそれだけで映画館で見て良かったと思わせるに十分。

やりたいことは色々伝わってきた。
まとめると、「ラブストーリーのそのあとで」
・前作のありのままはだめ!愛で"適応"(=社会化)するの!!!というトーンから、ありのままの自分と使命を受け入れるという着地
・愛が全て!!という前作から、愛は強いけど、個人の意志の力による進歩の今作
アナがめちゃ落ち込んだ時に、彼氏でも姉でもなく自分の力で一歩進んだのは本当に感動的だった。小さな声がするのって。君は本当に素敵な子だよ。もちろんそのあとは助けられたり助けたりするけど。
・君が道しるべ!君がいないと森で迷っちゃう!ていうクリフと、自分の力で光へ踏み出すアナの対比(構図が被せてあったので)
もはや童話の中でも、男女関係は常にうまくいくものではなく、二人で形作るもの。プロポーズがうまくいかないクリフ。
愛はとっても強くてとってもすごいけど、それだけでよいわけではないということか?
・科学(写真とか)と魔術の「結婚」(親世代)→対等な姉妹のように共存 という流れ(つまりは西欧的理性と非西欧的精神?非合理性?なのかなとか)は今現在の潮流を表してるんだろうなーと思った。
オリエンタリズムから遠く離れて。
お母さんが魔術側でお父さんが人間(理性)側なのも大変王道。そこを乗り越えていく(姉妹)というテーマはとてもよろしい。
結局アナ雪の良さってアナが女性であることなんだよなーー

ラブストーリーが終わったあとで、つまりロマンチックなラブ(強い王子様と冒険のご褒美、トロフィーとしてのお姫様)が効力を失いつつある中で、人間と人間の関係を描いたって感じ。
匂わされてるお父さんとお母さんのそれこそ童話のような物語が意図的に隠されてるのはそういうことかと。わたしはもっと知りたかったよ。
ダムの事件の後お父さんは幼馴染っぽいお母さんのこと全部忘れちゃったの?とかそのへん…

鏡(イコール氷)のモチーフはもう少し考えたいところ。
やっぱ自我形成とか内省とかそういうやつなんだろうか。どう考えても鏡めちゃ印象的に画面にうつりこんでた。


着地としてはとても妥当。ディズニーがもはや代表している多様性概念の1つの最新地点といった感じ。
ただそれだけに微妙な気持ちになる点もあった。
前作からエルサを現実のマイノリティ(同性愛者、障がい者など)の比喩だとした上で批判する意見があったが、その問題点はあまり解決できていないと感じた。
結局、役割と愛で社会に適応しても「まわりと違いすぎる!」と感じている人は社会を飛び出さざるを得ないのか。"違う人"同士は一緒に住むことはできないのか。
住み分けは大事、でいいのだろうか。
たとえ違っていても、愛し合うもの同士ただ認め合ってただ一緒に暮らすということはできないのか、と少し悲しくなった。
もちろん彼女は「橋のあちらがわ」となったわけで、その故郷を離れるという決意は並々ならぬものなはずで、金曜日にはゲームをしにいくらしいけど。
これくらいの距離感がベストってことなんだろうか。
結局、エルサは周りの国民とあんまり距離詰められなかったんだろうなー。
声が呼んでる!→自分(母)の声でした というのは、王道だけどよき。結局ありのままの自分(運命)は受け入れるもの、選択し直すものというテーマ自体は大変好み。


あともろもろ設定がばってない?地の精霊がダム壊せるならなぜいままで壊さなかったん?エルサは不死なん?精霊を目覚めさせたというのは…………それまでは……あと34年間よく兵隊さんたち孤立無援でご無事で…とか…いや物語上の役割的に必要だけども…あとオラフの同一性は…………あとダムの崩壊で王国が沈むから避難させるために精霊が暴れたのなら、やっぱ精霊は人間怒ってないの?ただ無駄な殺生はしない主義ってこと?
まあ細かい設定はどうでもいいし読み取れてないわたしがいけないのかも。

全体的にすごく良かったと思う。とっても良質。魔法じゃんじゃか使っててかっこいいしファンタジー単純に好き。前作は歌は良かったよね〜って感じだったので前作より好き。
エルサの新コスチュームも大変好きでした。かわいい。アナも常にかわいかった。彼女女王の器。向いてる。


アナの子孫たちが国を導き、それを遠くでずっと見守るエルサって考えるとしんどい。
天気の子見てたので、完全に王国は沈むと思ってましたね……ディズニーのパワーを感じた。

パンフで、神話(悲劇)のエルサとおとぎ話(ハッピーエンド)のアナ、自然=魔術=エルサ(書いてないけど、対比としての人間=アナ)と書いてあって、ますます2人への感情が高まってしまった。

1を見たときは、キャラクターへの愛着もなく、ただいまの物語もあまり響かなかった。
2を見て、キャラクターへ愛着が持てるようになって、いってきますの物語を受け入れざるをえなくなった。
もしあるなら、3ではまたただいまの物語になってほしいと思う。
ししまる

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