dm10forever

なぎさのdm10foreverのレビュー・感想・評価

なぎさ(2017年製作の映画)
3.9
【蜃気楼】

久しぶりのブリリアショート・・・っていうか、久しぶりのFilmarksレビュー(笑)
別に「I am GROOOOOOOT!!(映画なんか嫌いだ~!!)」ってなってたわけではありません。
自分の周りで、何となく気持ちが落ち着かないことが立て続けに起きてしまって、そっちの方に気持ちが向いてしまって、気がついたら「そう言えば、暫く映画も観てないな・・・・」って感じ。

ということで、長編は劇場で観ることとして、サクッと観られる短編からいきましょうということで、久しぶりにブリリア~を開く。

新しいタイトルが増えてるわ~って思いながらも、このイメージカットとタイトルの雰囲気に惹かれてポチっと再生。

――ある晴れた日。学校ではプール授業が行われている。
プールサイドには授業を見学する2人の生徒が座っていた。

「あなた、名前は?」
「・・・同じクラスなのに?」
「だって、覚えてないから仕方ないじゃん(笑)」
「・・・やまもと」
「下の名前は?」
「・・・ふみなお」
「ふ~ん・・・ふみなお。・・・・ねぇ、私の名前は聞かないの?」
「普通名前くらい覚えてるでしょ。同じクラスなんだから。」
「普通、覚えてないよ・・・」

クラスメイトの男の子と女の子の、どこかぎこちないやりとり。

「泳げない・・」と嘘をついてサボったプール授業。
それは、彼女の隣に座るため・・・。

「ねぇ、専攻、どうするか決めた?文系?理系?」
「ふみなおは?」
「まだ決めてない・・」
「ふ~ん。ま、私関係ないし」
「大学行かないの?」
「・・・その頃には私いないし。」

「高校生活」というリミットの中で、みんな平等に時間が流れているとばかり思っていた。
でも、ただ一人、彼女だけは違うリミットの中で生きていた。

「部活」「友達」「下校中の寄り道」「バイト」「恋愛」「教室の机」・・・・
「また学校に行けば会える」って、なんの保証もないのに何故か確信だけはあった。

「ねぇ、ずっとここにいるの?なんでプールに入らないの?」
「だから、泳げないからだって」
「私がいなくなっても、ずっとここに一人でいるの?」
「・・・・」

ぼんやりとしたと物語に徐々に輪郭が見え始めたころ、机の上に置かれる一輪の花・・・・。

てっきり高校生活によくある「甘酸っぱい1ページ」を描いた作品だと思っていた。
絵に描いたような青空と、プールから聞えてくるバシャバシャという涼しげな音、みんなの笑い声。
映像もとても瑞々しくて、でも何だかどこか寂しさも感じて・・・。
生徒たちの笑い声が楽しそうである分だけ、何処となく感じてしまう孤独感。

時が経って変わっていくものと変わらないもの・・・。
輝いていた青春はいつしか過去になり、思い出だけが残される。
やがて机の上の花は萎れ、机も教室の隅に片付けられる。

(普通名前くらい覚えてるでしょ、同じクラスなんだから。)
(普通、覚えてないよ・・・)

なんか、「切ない」ともちょっと違う。
どっちかというと「淡い」っていう言葉が合うような、まだ生まれたての気持ち。
そして彼の中に残り続ける「あの日」の光景。

(ねぇ、言ってよ)

久しぶりに映画を観たからかもしれないけど、ラストの一言はグッと来た。
想定どおりの一言ではあったんだけど、声のトーンや強弱などがシーンにピタリとはまっていて、本当に自分の心の声がそのままスピーカーから聞えてきたようなシンクロ感があった。

映像も好きだし、カット割りも好き。

短編だからちょっと設定が分かりにくい部分もあるけど、逆に短編だからこそ大胆に断片的に切り取れる良さもある。
あえて説明口調にせずに、空気(雰囲気)で「青春時代の淡い気持ち」や「無力感」が伝わってきた。

結構好きな作品でした。
dm10forever

dm10forever