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ボヘミアン・ラプソディのfumingのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.4
伝説的ロックバンドQueenと言わずと知れたそのボーカリスト、フレディ・マーキュリーを描いた一作。実録ドキュメンタリー映画というよりかは、クイーンをモデルとした寓話的な伝記映画である。したがって史実にとことん忠実では無いが、寧ろそれで良い。
本作ははっきり言って「最高のコンディションでクイーンの音楽を聴くための映画」だ。冒頭で「ライブ・エイド」をちらつかせ、物語はその一点に向かって集約して進んでいき、やがて件のライブシーンをクライマックスとして持ってくる。その間にクイーンとフレディの様々な物語が描かれていくわけであるが、我々はそれを観ることで彼らバンドの人生を追体験し、そして最後はあたかも彼らと共にライブ・エイドという大舞台でフィナーレを迎える、そんな爆発的なエクスタシーを擬似的に味わうことが出来よう。音楽というものは聴く時の心持ちで聞こえ方に変化があるものである。そんな意味でも本作はたっぷり2時間観客(リスナー)の気持ちを温めて、ラスト20分に全て解き放っているといえるだろうし、やはりラストのライブに全てが詰まっている。
本作はクイーン世代だけでなく若者にもヒットした映画であるが、それは世代を超えて愛される彼らの楽曲群の他に、タイトルでもある「ボヘミアン」という存在にあると思われる。今の世はテクノロジーと多様化が進み、インターネットなどで気軽に人と繋がりが持てるものの、反面本当の友人や居場所といったものが見つけ辛くなってしまっている。そんな常にどこか孤独で自分自身の在り方を探している現代の若者にとって、インド系移民でゲイというマイノリティとコンプレックスを抱えて生きたフレディに共感した人達が大勢いたのではないだろうか。またフレディの苦悩と葛藤の末に、最後は実の家族以上に真の自分を受け入れ認めてくれる「本当の家族」たるバンドメンバーとの出会いと大団円に皆喜び、感動したのではないだろうか。そう意味ではこの作品は救いの物語であると思うし、いわゆる青春映画というカテゴリの映画でもあると思う。
この映画は音楽映画の新しい傑作、そして金字塔だ。クイーンの素晴らしい音楽と人間賛歌の物語が詰まっている。何かと話題となった本作であるが、その評判は伊達では無い。とにかく、ラスト20分のライブ・エイドが圧巻の一言。激似のメンバーも一見の価値あり。シナリオは脚色あれど誰にでも分かりやすい王道もので、クイーンを全然知らなくても観ながら理解して楽しめるだろう。また彼らの曲は必ずどこかで聴いたことのある超有名曲ばかりなので、これまたよく知らなくても楽しめるだろう。もはやこの映画がベストアルバムみたいなものである。鑑賞後はクイーンが聴きたくなること間違いなし。
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