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リュミエール!のzhenli13のレビュー・感想・評価

リュミエール!(2016年製作の映画)
3.8
観たことない作品がたくさん出てきてどれも新鮮な驚きがあった。とどのつまり(シネマトグラフの撮影時間が50秒しかなく基本ワンカットという制約下とはいえ)映画は構図で決まるんだなと再認識した。

ナレーションの賛辞は、当時の評価・評判のそれとは一致しないのだろう。リュミエール兄弟の作品が素晴らしいというより、すべての始源がここにあって、それゆえに作品の純度が限りなく高いということなのだろう。ボートを漕ぐ水兵たちのバストショットをボート上から捉えた作品を今回初めて観て、この躍動感と瑞々しさはジャン・ヴィゴのようだと思うけど、それはヴィゴがリュミエールに倣ったと考えるのが自然なように。ロマン主義や印象派絵画を想起させるような作品も多い。
にしても撮影と現像と映写が一台でできるシネマトグラフって、すごい発明じゃないですか?

例のジョン・フォードがスピルバーグに言ったという地平線の話が出てくる。アルペン登山の隊列を捉えた作品は、ロングショットの画面上辺に雪山の稜線が据えられる。稜線に沿って画面の上4分の3くらいの位置を横断する隊列がほとんど黒い影のようによちよちと進む。その様子だけでなんだか可笑しかったりするのだが、フォード『騎兵隊』オープニングタイトルの馬列シーンはまさにこれだった。

すべての道はローマに通ずじゃないけど、これからも映画を観ていくうえでたびたびリュミエール兄弟作品を観返して眼を洗い直したいと思った。
そういやかつて『レ・フィルム・リュミエール』というDVD BOXが出ていたが、現在プレミアついちゃってる。本作『リュミエール!』のソフト買おうかなぁ。
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