一人旅

テルマの一人旅のレビュー・感想・評価

テルマ(2017年製作の映画)
3.0
ヨアヒム・トリアー監督作。

ノルウェーを拠点に活動するデンマーク出身の俊英ヨアヒム・トリアーが2017年に手掛けたサイキックスリラーで、不思議な力を持つ少女の数奇な運命を描きます。

大学進学のためノルウェーの片田舎での抑圧的な両親との暮らしに終止符を打ち、首都オスロで一人暮らしを始めた少女テルマをヒロインにして、幼少期の記憶がすっぽり抜け落ちているヒロインがある出来事をきっかけに自身の心の奥底に封印されていた超人的な力を再び呼び覚ましていく様子を、大学の同級生アンニャとの同性恋愛のゆくえを絡めて映し出した“サイキックスリラー”となっています。

もはや古典となった『キャリー』(1976)や『炎の少女チャーリー』(1984)等に連なる、“超能力系女子”をヒロインにしたスリラー映画で、コントロールの利かない自身の能力の存在を知ったヒロインと、彼女を抑えつけようとする敬虔なクリスチャンである両親との相克の果てに、覚醒した能力に対する自分なりの向き合い方を導き出していくヒロインの決意と成長を描き出しています。

『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)を皮切りに『ボーダー 二つの世界』(2018)、『LAMB/ラム』(2021)、『ハッチング ―孵化―』(2022)等、近年盛り上がりを見せる静謐な幻想性&陰性に満ちた北欧映画の中の一作に数えられる異色のサイキックスリラーで、主演のエイリ・ハーボーが見知らぬ自分に遭遇する多感なヒロインを繊細に演じ切っています。
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