タカシ

ニュー・ミュータントのタカシのレビュー・感想・評価

ニュー・ミュータント(2020年製作の映画)
3.9
『「クイーンズ・ギャンビット」の前と後』


二十世紀フォックス社における「X-MEN」シリーズ最終作。
とはいえ、原作がそうであるようにあくまでもシリーズのスピンオフ的な位置付けになると思う。

度重なる公開延期や追加撮影再撮影の噂が飛び交い、それだけで観る前から低評価をしてしまいそうだが、実際に観てみるとそうでもない、言うほどひどくない作品だった。

「シリーズ初のホラー」と噂されていただけあって、終始恐ろしげな雰囲気があるもののミュータントが存在しているという世界において、単純に怪異を怪異として捉えられるはずもなく、本当に「X-MEN」でホラーをやりたかったのか、やるんならもう少し周到な世界観の説明が必要だったように感じた。

一人一人のキャラの掘り下げが浅いという、他の方のレビューを見たが、これは当然ホラーをやるにあたってキャラをいちいち説明する訳にはいかなかったという都合上の欠陥であり、この中ではギリギリちゃんとやってたんじゃないかと思う。

何せ主要登場人物は六人しかいないので、そりゃ見てりゃわかるだろっていう製作者の気持ちも分からんではない。

それよりもこの作品、登場人物六人のうち四人が女性で、明らかにそちらがメインになっている事が興味深い。
割りとはっきり男性キャラ主導でストーリーが進むこれまでのシリーズとは明らかに異質なものを感じる。

また登場人物がティーンエイジャー相当なので思春期のモヤモヤともマッチしていて、逆にそれがホラー要素を減じさせてもいたのかな?

製作開始時はおそらく「ゲーム・オブ・スローンズ」のメイジー・ウィリアムズが一番手だったのではないかと思うのだが、20年にNetflixで公開された「クイーンズ・ギャンビット」で一気にアニャ・テイラー=ジョイが台頭した。もし「クイーンズ・ギャンビット」の公開がもう一、二年早ければ本作もこれ程不遇な扱いを受けずに済んだのではないかと思うと、本当に残念に思う。

特に若者五人の中の女性三人、この中でもやはりアニャは図抜けて良かった。

というか、ここ数年彼女を追いかけていた自分を久々にちょっと誉めてやりたい、と思う訳ですよ。

監督はこの作品を三部作として予定していたそうだが、壮大なトリロジーになるよりは小粒な佳作としてそっとしておきたい気持ちの方が強い。

まあアニャのあのキャラクターがもっともっと見たかったけどね。
セルBlu-rayにて。21.09.11
2021#013
タカシ

タカシ