ヨッシー

X-MEN:ダーク・フェニックスのヨッシーのレビュー・感想・評価

X-MEN:ダーク・フェニックス(2019年製作の映画)
3.0
『X-MEN19年の歴史のクライマックス...がこれで良いの?』

マーベルコミックのスーパーヒーローチーム『X-MEN』の実写映画シリーズ最新作。

宇宙の謎のパワーを吸収したことで能力が制御できなくなってしまったジーン・グレイを巡りX-MENを二分する戦いが勃発してしまう。

監督は『X-MEN』シリーズの製作を務めたサイモン・キンバーグ。
出演はソフィー・ターナー、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンスなど。

吹き替え版と字幕版で1回ずつ鑑賞。

19年続いた『X-MEN』シリーズの最終作ということで楽しみにしていた作品。
同じマーベルでもMCUと比べて結構当たり外れが激しい印象の『X-MEN』だけど、なんだかんだでどの作品も好き。
なので、長年追い続けてきたシリーズの簡潔に寂しさを感じつつも期待していたわけなんだが....。

正直なところ1本の映画としてはともかくシリーズの最後を飾るにふさわしい作品かと聞かれれば問答無用でNOとしか言えない。
せっかくの19年のシリーズの積み重ねもあまり活用されず、物語のスケールも非常に地味。話も正直これで全てやりきって終わった感がほとんどなく、続編があるなら別にいいけどこれで最後だと分かっているだけに中途半端な終わり方に見える。
それこそ今年公開した『アベンジャーズ/エンドゲーム』がMCU11年の集大成としてこれ以上は考えられないほどの作品だったこともあって、MCUより長い歴史を持つX-MENの最後がこれで良いの?という思いが拭えない。

ではシリーズ完結編であるということは忘れてあくまで1本の『X-MEN』シリーズの作品として観るとどうかと言うと、決して悪い作品ではないんだけど、やっぱり『X-MEN』シリーズらしい雑さが目立つ作品になっている。

もちろん良いところはたくさんある。
冒頭の宇宙での救出ミッションは『X-MEN』シリーズでは珍しい人命救助という1番ヒーロー的な活躍をするし、ここでの各キャラクターの能力を活かしたアクションの見せ方も良い。
他にも中盤の街中でのアクションもチャールズがこういった乱戦で活躍するのは新鮮だし、8人ものキャラクターが入り乱れながらもある程度整理できているアクションになっている。
クライマックスの列車での戦いも狭い列車内でそれぞれのキャラの能力を活かしたアクションを見せてくれる。
総じてアクションの作りは『X-MEN』シリーズでも上位に入るぐらい満足できた。

でも、ストーリーに関してはかなり雑。ツッコミどころ満載だし、とにかくあらゆるところが中途半端。

例えば、今回1番中心となるジーンの物語。
彼女を助けるためとは言え彼女に嘘をついたり心を操ったチャールズに対しての怒りに関して、
「私のためにしてくれた事なんだよね。じゃあ許す。」じゃ雑過ぎる。
今回はチャールズの指導者としての失敗からに成長の話でもあるのにそれじゃあダメでしょ。

他のキャラの扱いに関しても雑なところばかりで、中盤でのある重要キャラの退場の仕方も雑。
たぶん強すぎて扱いに困ったクイックシルバーの排除の仕方も雑。
エリックの仲間のミュータントの扱いも超雑。

せっかく冒頭でX-MENと政府が協力関係になっていたのも、政府に手のひらクルっぷりが雑だし、最終的にX-MENが政府の信頼をちゃんと取り戻した描写も無し。
しかもこれが最終作だから余計にモヤモヤするわ。

どうせなら列車でのバトルの時にいた息子がナイトクローラーのファンだった兵士のキャラをもっと活かしていれば良かったと思う。
彼をもっと掘り下げていれば今まで人を傷つけなかったナイトクローラーが戦いを決意する瞬間も良くなったのに..。

エリックも「復讐は無駄だった」と言ったばかりなのにあっさり復讐に走るし、その理由である死んだ人物って『フューチャー&パスト』でお前殺そうとしてたよね?今更愛してましたって言われてもしっくりこないんだけど。

ジェシカ・チャスティン演じる宇宙人のキャラも『X-MEN』シリーズで今更宇宙人出すのもどうかと思わなくもないが、それは置いといてもなんか中途半端。
まあこれはちょっとしょうがないところもある。
元々この宇宙人のキャラは『キャプテン・マーベル』に登場してるスクラル人になる予定だったのが変更になったらしいからしょうがないかなとも思う。

他にもクライマックスは宇宙を舞台にした大バトルになる予定だったのが『キャプテン・マーベル』と酷似していたせいで大幅に変更させられちゃったりとディズニーの20世紀フォックス買収の影響がいろいろ出てるんだとも思う。

あと、ディズニーの影響かどうかは知らないけど、序盤にミスティークがチャールズに「いつも男を助けるのは女。X-WOMENに改名したら。」というセリフがあるけど、これって見方によっては男性差別にも聞こえる。
確かに本作は『キャプテン・マーベル』と同じく抑圧されていた女性がその束縛を振り払い活躍する、近年のハリウッドの潮流に乗った作品ではあるんだけど、女性を推すのはいいけど、逆に男性を貶めるような作品になったらだめでしょ。
近年のディズニー作品なんかは女性推しがかなり顕著なんだけど、それが行き過ぎて逆差別になったら元も子もない。せめてラストはチャールズたエリックが成長して何かしらの活躍をして欲しかったのに、全部ジーンが解決してくれたんじゃダメじゃん。

ディズニーによる買収による製作上のゴタゴタがいろいろあったのは間違いなさそうだし、同情の余地はあるんだけど、19年の歴史の締めとしては全く閉まらない残念な出来になってしまったと思う。
それでもなんだかんだで嫌いになれないのも『X-MEN』シリーズ。
いろいろ文句も多いシリーズだけど、19年間楽しませてもらった。
今後はMCUでX-MENのキャラクターが活躍する事に期待します。
ヨッシー

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