サマセット7

トレイン・ミッションのサマセット7のレビュー・感想・評価

トレイン・ミッション(2018年製作の映画)
3.5
監督は「エスター」「ロスト・バケーション」のジャウム・コレット=セラ。
主演は「シンドラーのリスト」「バットマンビギンズ」のリーアム・ニーソン。

[あらすじ]
元警官で現在は保険屋のマイケル(ニーソン)は、10年以上通勤列車に乗って職場に通っていた。
しかし、息子の教育資金が要るにも関わらず、職場で解雇を告げられてしまう。
放心状態で乗りこんだいつもの通勤列車で、謎の女から取引を持ちかけられる。
ターゲットを探せ。ターゲットは列車内にいる。ターゲットは終点駅で降りる。ターゲットを特定できたら、大金を渡す。
半信半疑のマイケルだったが、車内の指定された場所で大金を発見し…。

[情報]
リーアム・ニーソン主演のアクション・スリラー作品。

リーアム・ニーソンは「96時間」の成功以来、継続的にアクション映画に出演している。
特に今作の監督ジャウム・コレット=セラとは、「アンノウン」「フライトゲーム」「ランオールナイト」、今作と4本でコンビを組む。

ジャウム・コレット=セラは、サイコホラーの怪作「エスター」で名を上げたサイコスリラーの職人監督。
監督の特技である、誰もが疑わしく見える神経症的演出と、リーアム・ニーソンの幸薄そうに演じさせたら天下一品の技量が、噛み合った、ということなのだろう。
コンビ作の4本とも、概ね3000万ドルから5000万ドル程度の中規模予算で製作され、苦戦したランオールナイト以外はいずれも及第点のヒットを上げている。

今作はいわゆるサイコスリラーとアクションのミックスである。
構造的には、同じ監督・主演コンビによる「フライトゲーム」とよく似ている。

評価は、批評家、一般層とも、割れている。
製作費4000万ドルに対して、興収は1億2000万ドル弱。

[見どころ]
緊迫感あふれる展開!演出!
次から次とピンチまたピンチ!
キャスティング!
105分でさくっと観られる安定感!

[感想]
観ている間は楽しい!観終わったらあまり覚えていない!というタイプの作品。

今作の白眉は、ベラ・ファーミガ演じる謎の女性が、リーアム・ニーソンに取引を持ちかけるシーン。
「死霊館」では霊能力者を、「エスター」では追い詰められる母親を演じたベラ・ファーミガは、今作でもホラー映画女優としての本領を発揮。
目が怖い!!
トンネル内の光と影の演出もあって、クラクラするような幻惑感を出している。

相変わらず、追い詰められるリーアム・ニーソンには引き込まれる。
こういう役を演じるのは、お茶の子さいさいだろう。

展開が非常に謎めいていてスリリングなだけに、真相判明後の飲み込み辛さは、フライトゲーム同様である。
あまり深く考えずに、雰囲気を楽しむのが吉か。

終盤は、電車アクションの見せ場も満載で楽しい。
ただ、色々詰め込んだ結果、スリラーパートが中途半端になった感もあるか。

[テーマ考]
原題の「the commuter」は、通勤者、の意味。
劇中でも、10年間の通勤の積み重ねへの言及がしばしば見られる。
ラストの展開も合わせて考えると、長年の積み重ねの大事さを謳った映画、と言えなくもないか。

もちろん、テーマなどと野暮なことは言わず、リーアム・ニーソンが電車内で困りながら頑張る姿、サイコー!!!でOKな作品だ。

[まとめ]
リーアム・ニーソン主演の「いつもの」アクション・スリラー。

今作で観られるジャウム・コレット=セラ監督の演出力はたしかなものだ。
彼に潤沢な予算と質の高い脚本を与えてみると、どうなるか、観たくもなる。
最新作は2億ドルの製作費を費やしたディズニーよ「ジャングルクルーズ」。
次作はDCEUの「ブラックアダム」。
いよいよ大作を任されるようになってきた監督の今後に注目したい。