TAK44マグナム

XXのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

XX(2017年製作の映画)
2.7
Xは2つだよ。
3つだとハゲマッチョがスケボーで遊び始めちゃうからね〜。


4人の女性監督による4つの短編からなるホラー・オムニバス。
タイトルのXXは、女性の染色体を表しているのでしょうか。


第一話。
「隣の家の少女」で有名なジャック・ケッチャム原作による家族崩壊ホラー。
クリスマス、電車で隣り合った男が持つプレゼントの箱の中身を知りたがった息子。
母親の制止もきかずに箱の中身を見た息子は、その日からまったく食事をとらなくなってしまう。
そのうちに、娘も、そして父親までもが食べることを拒否するようになる。
そんな奇妙な状況でも、平気で食事が喉を通る母親。
しかし、やがて母親は、「ある事」に飢えている自分に気付くのであった。


4編の中では一番、惹きつけられました。
どうして食べなくなってしまったのか?
食べないままで、どうなってしまうのか?
あの箱の中には一体何か入っていたのか?
おおいに魅力的な謎だし、興味は持続しましたが、最終的に答えが得られるわけではなかったのが残念。

淡々としていて、これといってホラーな事が起きないからなのか、唐突に派手なゴア描写が挿入されます。
そこがオチでも良かったかも?
もっと、家族の中での母親という存在に関係した観念的なテーマを内包しているのかと思いますが、それはホラーとはちょっと違うような気もしました。


第二話。
娘のバースデイパーティを成功させたい母親。
いつの間にか帰宅していた夫の部屋に行くと、なんと夫は死んでいた。
事を荒立ててパーティが中止になるのを避けたい母親は死体を隠してやり過ごそうとするが・・・。


娘の精神状態やら何やらと、家庭としては緊迫した雰囲気があるものの、これは完全にコメディ。
コメディなのにコメディとして撮っていないので、なんとも言えない中途半端感が拭えませんでした。
別に主人公が殺人を犯したわけでもないので、余計にホラーテイストなんて微塵にも感じられず。
オチも普通すぎるし、唯一の慰めは娘の幽霊コスプレが可愛いことぐらい。


第三話。
4人の男女が立入禁止区域でキャンプをしていた。
素晴らしい眺めを楽しんだ彼らは、岩の壁面に奇妙な絵を発見する。
それはどうやら古代に描かれたものであるようだった。
夜、パーティを楽しんでいると、ひとりの女性が何者かに憑依され、殺人モンスターと化してしまう。


直球ド真ん中のモンスター・ホラーですね。
捻りもなんもなく、悪魔化した女子が仲間を殺して終わり。
女性監督だからなのか、他の3編が全て、様々な視点から「母親」を描いているのに対して、本作だけが普通にスプラッターしているので結果的に4編の中では一番の異端児にみえます。

特筆すべき点があまり無いというか、短すぎて展開が性急なので、すぐに終わってしまう感じ。
モンスター・ホラーの割にグロ度もそんなに高くありません。
長編だとしたら、そのイントロダクションだけを切り取ったような代物かと思います。
モンスターの奇っ怪な動きは好みでした。


第四話。
田舎町で身を隠すように暮らす母親と息子。
別れた父親はハリウッドで成功しているらしい。
どこか謎めいた二人の生活だが、ある日、息子が同級生の爪を剥いだと学校から呼び出しが。
母親は息子に罰を与えるよう校長先生に頼むが、何故か「あなたの息子は素晴らしい才能の持ち主であり、我々も影響をうけている」と、取り合わない。
疑念を抱いた母親は、息子が恐るべき存在になりつつあることに気付く。
いや、それはずっと以前から、息子が誕生した時から恐れていた事態であったのだが・・・。


悪魔と化してゆく息子を守ろうとする母親の無償の愛を描いた、「不吉な招待状」や「イーオンフラックス」のカリン・クサマ監督作品。
何だか、海外ドラマの第一話のような印象。

ここからの続きが観たいのに、「え?これで終り?」と、特に高揚感も何もないままのジ・エンドでした。
不気味な悪魔崇拝や、徐々にデビルマン化してゆく息子など雰囲気は悪くありませんが、予算の関係か画作りはチープだし、どこまでもテレビドラマのレベルでしかないというか、他の3編もそうですが「世にも奇妙な物語」でもやれちゃう程度のモノ。
本作は、本来の話のスケールが大きいので、所詮20分ほどの尺では
面白くするのは難しかったのではないでしょうか。


総合すると、ホラー短編の寄せ集めとして面白くはないですね。
女性監督ならではの洒落た画や、女性を描いたテーマでまとめているのは(第三話は別として)良しとしても、いかんせんホラーとしても普通のドラマとしても薄っぺらすぎます。
もっとも、こちらが男だから理解できないだけなのかもしれませんが・・・・・もしかすると、女性なら興味深く観られるのかな?

唯一、第一話の奇妙で不穏な世界観は頭に残る部類で、さすがは高名なケッチャム原作だと思いましたけれど・・・

結局、どれもオチが特に弱いんじゃないかと。
提示された謎が解明されないまま終わるのばかりじゃ、こちらの求める満足感を満たしてくれませんよね。
何かしら、強烈に尖ったインパクトが欲しかったです。


NETFLIXにて